死の罠−21 ページ29
｢首が下の二つの歯車と上の歯車に挟まれて、どうにも動かねーんだ。
んで、『時間が来たら、この歯車が動く。そうしたら、お前の首が落ちる』だとよ。
仮面の死神とか云う奴によると｣
｢そんな！｣
ベル君が挟まれているのは、私の力では到底動かせそうもない巨大な歯車だ。
絶望に、指先から血の気が引いて行くのが分かる。
｢ヤダ……そんなの嫌だよ、ベル君｣
｢俺だって嫌だし。
死にたく無くて死にそーだわ。
でも、ありがてー事に、仮面の男はAに手を出さなかった。
だから、お前は職員室に戻って、他の連中と一緒に此処を出る準備しろ｣
｢どうして｣
｢俺を助けようとして、一人で頑張って、瞳の前でお前が殺されたりしたら、今度こそ、俺は頭が可笑しくなっちまう｣
｢そんな事、出来ないよ！
それに、さっきはベル君と二人で居たのに襲われたんだよ？
一人とか二人とか、あんまり関係無いよ｣
｢『大切なものが自分の手中にあるとチラつかせ、ベルが慌てる様を見るのは、本当に楽しかった』。
そう、仮面の男は言ったんだ。
だから今度はAを使って、俺を苦しめようと考えるかもしんねぇ｣
｢だから私に、ベル君の事ほっとけって言うの？
逆のパターンで考えてよ。
もし私が敵に捕まってて、放って置けば死ぬ状況で、『私を放ってベル君だけ逃げて』何て言われたら、ベル君は逃げるの？｣
｢そう云う問題じゃねーよ。
俺にとってのAと、Aにとっての俺は、全然違うだろ？｣
｢何それ。どの辺りが？｣
｢どの辺りがって、おまっ……馬鹿野郎！
お前、知ってて言ってんだろ！？｣
ベル君が声を荒立て、私を睨み付ける。
そして苦しそうに、盛大な溜息を吐いた。
分からない事で怒られて、私は俯いて歯軋りをする。
｢ったく、なんでこんな喧嘩しなきゃいけねーんだよ！｣
｢本当だよ。この分からず屋！｣
｢Aに分からず屋って言われたくねーよ！｣
｢……私、絶対ベル君の事助けるから｣
｢勝手にしろ｣
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作者名：ポアンナ | 作成日時：2018年3月17日 13時
