隠れた心−２ ページ2
バーナーを持って、私達は二階へ上がった。
ベル君は私からバーナーを取り上げて、頼りがいのある笑顔でキャビネットに向けてバーナーを構えた。
｢A、下がってろ｣
私が一歩後ろに下がったのを確認すると、ベル君はトリガーに指を掛けて、そして力を込めた。
火勢が強くなる。
バーナーで焼き切った鎖は赤く熱され、形を変えて行く。
熱せられ、真っ赤になった鉄が両端の重みに、耐え切れなくなったのだろう。
――ゴトリ、と大きな音を立て、鎖が床に落ちる。
ベル君はバーナーを止めて、微笑んだ。
｢うしし、やったぜ！
さーて、中には何があるんだ？｣
ベル君は荷物の中から雑巾を取り出し、それでキャビネットの取っ手を掴んだ。
中には一本のビデオテープがあった。
ラベルに『ＪＩ』と云う文字が記されている。
｢ビデオテープか。
この『ＪＩ』ってのは、何だろうな｣
｢分からない。何処かにビデオデッキがあれば良いんだけど｣
私達が廊下に出ようとした時、ガチャリ、と鍵の回る、輪郭のはっきりした音が響いた。
一泊置き、扉の開く音が聞こえる。
そしてギシリ、と一歩、歩き出す音が聞こえた。
｢視聴覚室？
やべぇ、逃げんぞ！｣
ベル君は戸惑う私の手を引き、廊下を駆け出した。
だが、
｢きゃっ！｣
急に手を引っ張られたせいか、私は足が縺れて転び掛ける。
私の声で、視聴覚室から出て来ただろう仮面を被った人物に見つかってしまい、ナイフを振り下ろされた。
｢馬鹿野郎！ A、先に行け！｣
｢う、うん、わかった！｣
悔しいが、私が足の速さで劣るのは事実。
手を引かれたままだと、いざと云う時、ベル君まで巻き添えにしてしまうだろう。
ベル君は、手に持ったままのバーナーにスイッチを入れた。
顔面近くに火を向けられ、仮面の人物が怯む。
｢今だ！｣
ベル君が叫ぶ。
私達は転がるようにして、階段を駆け下りた。
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ベルのティアラ
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作者名：ポアンナ | 作成日時：2018年3月17日 13時
