C seventy-nine ページ40
｢行くぞｯ…！｣
目の前の扉に手を掛ける。開け放たれた部屋は、ゾムが最初に連れられたあの真っ白な部屋のようだった。ゾムとぴくとの眼差しが鋭くなる。その部屋の真ん中。真っ白い何枚ものモニターに囲まれ、それを眺めながら佇む一人の男。ひょろりと細長く、羽織った白衣がさらに白い。男は背を向けたまま、歌うように呟いた。
｢…あぁ、待っていたよ。随分のんびりと来たもんだから、昼寝をしようかなんて思っていたところさ。｣
頭にねとりと絡み付く何とも言えない陰気な声に、トントンとひとらんらんはゾクリとした。それでも口を開く。
｢何ほざいとんねん。今のこの局面で、寝言なら寝て言えや。｣
｢まぁ何をどうしようと、その首、飛ばすけどね。｣
今にも握り潰せそうな細い喉の奥で押し殺したような笑いを響かせ、男はくるりと振り向いた。
｢…！｣
その容姿が顕になる。
痩せこけた頬、血色の悪い薄い唇、そしてメガネの奥でぎらついた、細い瞳。暗い光が奥で轟々と燃えているのが見えた。
｢あぁ、君達は本当に馬鹿な連中だ。｣
｢何がや。｣
ゾムが静かに食いつく。男はその細い目をさらに細めてゾムを見た。
｢久し振りなのに、お父さんへの挨拶もなしかい？
『0826』？｣
｢…俺はそんなに名前とちゃう。｣
｢そんなわけがないだろう？お父さんが、ちゃんと君の体に刻み込んであげたじゃないか。君が君の名前を忘れぬように。｣
｢黙れ。お前は俺の親やない。｣
ゾムの瞳がスッと細くなり、次の瞬間凄まじく鋭い殺気が放たれる。これまでの比ではない程のその迫力に、トントン、ひとらんらんは思わず身を硬くした。その横で、ぴくとも一歩踏み出す。
｢もうあんたは終わりです。援軍も、ここの全ての兵士も研究員も助けには来ない。あんたが死んで、そしてお終いですから。｣
｢君も居たのか。君は『1408』だよね。覚えているよ。折角の実験中にどこかへ行ってしまって、私達がどれほど心配したことか。｣
｢俺はそんな名前じゃない。｣
ぴくともその目に憎しみを宿す。そんな彼を見て、男は更に気持ちの悪い笑みを深めた。
｢…君達。フューラー帝国の奴らは建国からこれまで戦勝記録しか残していない、そうだろ？
だからこんなにも油断が出来る。慢心に浸れるんだよ。｣
｢何を…。｣
トントンがなにかに気付いて後ろを見ると、同時にウィーンという音が響き、扉の前に頑丈そうなシャッターが降りた。
｢見るからに非力な私が、どうして余裕なんだろうね？｣
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壱(プロフ) - 初コメです この作品ずっと見てます！！大好きです！ 神作品ありがとうございます！ (2022年1月14日 10時) (
レス) id: 135ae75002 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» 読んでくださってありがとうございます！お客様が神様の精神でやっております^ ^いずれにしても、嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2019年10月23日 20時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - 最近読んだんですけど神ですかね？神ですよね！本当に好きです！ (2019年10月23日 19時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 鈴蓮さん» おぅっ！？鈴蓮さんありがとうございます！まさか読まれているとは…くそ長い作品にお付き合い頂き、本当にありがとうございます！ (2019年10月16日 12時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蓮(プロフ) - 完結おめでとうございます！(*´∇｀*) (2019年10月16日 12時) (レス) id: 4a95fce3d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年7月27日 20時
