伊野尾先生と僕。【2】 (ページ45)

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過保護ページ45

呼び止めると「明日、学校で使うもの買い忘れてたからちょっと行ってくる。」と一瞬だけこちらを見てパタパタと出掛けてしまった。

「まったくもう。今じゃなくてもいいでしょうに...。」

やれやれと軽く溜息を吐くと、「お前、結構鈍いのな。」と薮に言われた。

「ほえ？」
「いや、単なる独り言。」
「？」
「まあまあ、気にすんな。あー、侑李いなくて暇だしサッカーでも観ようかな。」

ドカッとソファーに座りなおすとテレビの電源を入れ海外のサッカー試合にチャンネルを合わせる。
おいおい。
“侑李いなくて暇”ってなんだっ。
聞き捨てならないな。
侑李は俺のだっつーの。
彼が帰ってくるまでに片し終わらせたくて、急いで残りの洗い物をこなす。

知念が出掛けてから三〇分ほど経った。
三人でサッカー観戦しながら、何度か知念にメールを送っていたが一向に既読にならない。

「ねぇ、もう三〇分も経つんだけど。」
「え？なにが？」
「知念だよ！まだ帰ってこねーし。」
「ああ、なんか買いもん行ってくるっつってたな。....お！行け！そこだ！あーくそう、取られたか....。」
「メール送っても既読にならないし。」
「ああ、買いもん中なんだろ？おおおお！そこだそこだ！今だっ行......」
「もう！薮！心配じゃねーの？知念のこと！」

俺の話は上の空でサッカーばかりな薮の腕をグイグイ揺さぶると、はぁ...と溜息を吐きながら呆れたように俺を見る。

「....まだ三〇しか経ってねーじゃねーかよ。買いもんなんてそんくらい掛かるだろーが。」
「だって！既読も付かないんだぞっ。」
「んなもん、気づかない時だってあるだろ。お前なんてたまに何時間も返してこねーじゃねーか。」
「.....そ、れは、そうだけどっ。でも、知念はまだ高校生だし心配じゃねーか。」

俺が家に居る時に、学校以外でこんなに家を空けたことがない。

「知念可愛いから、誘拐とかされてたらどうしよう。あ、小さいから運転席から見えなくて事故に遭ってたりしたらどうしよう。」
「.....ったく、どんだけ過保護なんだよ。」
「だって。学校以外でこんなに離れたことないから....」

不安で心配で、少し泣きそうになってる俺に「そんなに心配なら電話掛けてみたら？メールより気付くんじゃない？」と高木からの優しいアドバイス。
「そうする！」とすぐに電話を掛けた。
何度かのコールの後、「....はい。」と少し元気なさげな彼の声が耳に届いた。