知らない感情 ページ44
昼食も程なくして終わり、少し休んでから俺は後片付けをしにキッチンへ。
「僕も手伝う。」と知念は言ってくれたが、気持ちだけ受け取り丁重にお断りしておいた。
いかんせん彼は不器用だから、片付けに倍の時間が掛かるのだ。
因みに客人である二人も申し出てくれたが、知念の数倍不器用な薮は以ての外だし高木だけに手伝ってもらうのは気がひけるので、こちらも丁寧に断った。
「ゆっくりしてて。」とリビングへ促し、食後の飲み物を渡す。
コーヒーを片手に寛ぐ高木と薮。
その相手をしている知念にはカフェオレ。
「へぇ、そうなんだ？頭良いんだね。」
「んー？よくわからないけど、ちゃんと授業聞いてたら大体のことはわかるよ？」
先程から背後で高校の話やゲームやアニメの話...つまりは知念のことばかり聞いてるこの二人。
知念も嬉しそうに楽しそうに話している。
「侑李は何の教科得意なんだ？」
「僕は体育！」
「意外だなぁ。」
おいおい、なんだ。
いつの間に薮は知念のこと“侑李”なんて呼んでるんだ。
聞いてねーぞ。
「知念は運動好きなの？」
「うん。僕体動かすこと大好き！」
は？
高木はくん付けじゃなくなってるし。
知念も知念で敬語じゃなくなってるし。
え？なに？この取り残されてる感！
知念はお前らのじゃねーし！俺が一番だし！
俺のだ、し....。
......いや、そうじゃなくて...。
「.......なに、これ...。」
自分のよくわからない感情に、ポツリと呟く。
なんだろう、このゾワゾワする感じとなぜだか少し苛つく感じ。
....ああ、そうか。
きっと俺も早くあそこに混じって楽しみたいんだ。
「ちょっと高木！終わんねぇ！手伝え！」
早く片し終えたくて、一番使えそうな高木を呼ぶ。
「えー？もう。だからさっき言ったじゃん。」
文句を言いながらもすぐに来てくれるところ、高木はやっぱり優しい。
シンクに二人並んで片し始める。
こうして高木と二人で何かするのも懐かしい。
少しくすぐったい気持ちになりながらも、あっという間に片し終えていく。
やはり二人だと早い。
「ありがとね、高木。あとこれだけだしもういいよ。」
「え？いいよ、最後まで手伝うよ。」
「そ？じゃあ、お願い。」
懐かしくてちょっと嬉しくて。
少し浮かれた俺は、知念が悲しそうな顔をしてこちらを見ていたことに気づかなかった。
「侑李、急にどうした？」
薮の声でリビングへ振り返ると、どこかへ出掛けようとする知念の姿があった。
「知念？なに？どこ行くの？」
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作者名：ちぃねずみ | 作成日時：2017年11月5日 23時
