時間ではなく ページ43
「伊野尾くん顔真っ赤だよー。なに?照れてんの?」
ケラケラと揶揄う高木に、「うっせー。お前はこれでも食ってろ!」と隅で焦げ焦げになった餃子を高木の皿に入れる。
「ちょっとー。図星だからってやめてよー。」
「うっさいうっさい!図星なんかじゃねーし照れてもねーわっ。」
「はいはい、そういうことにしておくよ。」
「だーかーらー!」
「え?伊野尾先生、照れてるの?僕のこと好きになった?」
「照れてねーしなんねーわっ。」
「えー、けちー。」
「いや、ケチとか意味わかんねーわっ。」
「伊野尾くん、素直になりなよー。ねー、知念くん。」
「ですよね!伊野尾先生、素直になってくださいね!」
俺と高木のやり取りに、またしても面白がって知念が割り込んで、それはもう突っ込むのが面倒臭いことになってしまった。
「もうお前ら黙って餃子食ってろっ!」
「やだ、伊野尾くん怖ーい。」
「先生こわーい!」
「....もう餃子食べさせないぞ、知念。」
「えっ!やだやだ!ごめんなさい。もう言いません!伊野尾先生が僕のこと好きで照れてるなんてもう言いません!」
「ちねーん.....。そんなこと言うのはこの口かっ!」
あからさまに面白がってる反省の言葉に、俺も反撃。
知念を羽交い締めして、後ろから両頬をむにっと摘む。
もちろん痛くない程度に。
「ひゃーっ。にゃにも言っしぇにゃいよー。」
「なになにー?聞こえないなぁ。」
「ひゃだー、ごめんにゃひゃいー。」
羽交い締めのまま、うにうにと摘んだ頰を捏ねる。
二人でずっと密着しながらキャッキャと戯れる光景は、きっと向かいの二人にとってはすごい衝撃だったのだろう。
「出会って間もない人間がこんなにも打ち解け合えるもんなのか...?」
ポロッと薮が呟いた。
「俺にはたぶん出来ないと思うけど...きっと二人は何か合うものがあったんだろうね。」
薮に同調しつつその先を見つけようとしてくれる高木。
「そうだな。」と薮もそれを理解しようとしてくれる。
確かに一ヶ月そこらで、ここまで打ち解け合えることってそうそうないだろう。
俺自身も驚いてるくらいだ。
でも、なんだろう。
「...知念は...なんかスッと受け容れられたんだよね。」
高木と薮の言葉に返答するように自然と気持ちが声に出た。
そんな俺の声に薮はフッと笑ったあと、「そうか。」とまるで兄のような表情を浮かべる。
「同じ精神年齢だったのかもな...。」
「おい、薮。」
少し止まった空気を、再び笑いに戻してくれる。
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作者名:ちぃねずみ | 作成日時:2017年11月5日 23時