天使 ページ42
みんなで餃子を食べながら、ワイワイと昔話に花を咲かせる。
高木と薮は高校時代の俺を面白おかしく、時折話を盛大に盛りながら知念に吹き込む。
そんな二人にいちいち突っ込みながら、「知念、信じるなよ。」と念を押しておくが、そんな彼は明らかに二人同様、面白がっている。
散々の言われように、俺はいい加減待ったをかける。
「おい、こら!お前ら!俺のイメージ崩れるだろ!やめろ!」
「伊野尾のイメージぃ?」
「伊野尾くんのイメージねぇ?」
「なんだよ。あんだろ!色々!」
向かいに座る二人は態とらしく「うーん」と考え込みながら、ポツポツ出していく。
「伊野尾くんのイメージ......キノコ?」
「.....ヒョロい?」
「.....テキトー?」
「......口悪い?」
「......やる気なさげ?」
「お前らな......。」
二人から発せられるイメージにがっくり肩を落とし呆れていると知念が不意に割って入ってくる。
「えー?伊野尾先生はカッコいい!...あと、優しい!それから....賢い!天才!可愛い!んと....頼もしい!えっと、それから、それから....」
良いイメージばかりを伝えてくれる彼に若干こそばゆくなりつつ、「さすが知念は違うねぇ。」なんて言いながら彼の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「知念くんは伊野尾くんのこと大好きなんだね?」
「はい!大好き。僕、伊野尾先生のこと、すごく好きです。伊野尾先生が僕の生きる力。本当に大好き。」
ふわりと綺麗に微笑みながら話す知念。
高木はきっと軽い気持ちで聞いたんだと思う。
それに対して返ってくる彼からの返事があまりにも真っ直ぐで思わずこちらが赤面してしまう。
そして、今日知ったこと。
彼は周りに対して警戒心を解くと、誰がいようと惜しみなく、好意を寄せる相手に好きを伝える。
そうすることが、さも当たり前かのように。
「知念くんは、躊躇なく好きって言うんだね?今時の子ってみんなそうなの?」
「うーん...よくわからないです。でも、ちゃんと伝えなきゃ伝わらないから、僕は“ありがとう”と“好き”は、自分の言葉、自分の声、自分の気持ちで伝えたいなって。」
そう言って不意に彼がこちらを見る。
「ん?」
「伊野尾先生、大好き。」
眩しいほどの天使の微笑みでそんなことを言う。
これは....ズルイと思います。
「あ、ありがとね、知念。」
もう聞き慣れたこの告白も、時や状況が違えばこんなにも狼狽えてしまうものになる。
動揺と照れで、きっとなんとも言い難い顔になっているであろう俺。
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作者名:ちぃねずみ | 作成日時:2017年11月5日 23時