伊野尾先生と僕。【2】 (ページ36)

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大事ページ36

「伊野尾くん...そんな顔するんだ...。」
「伊野尾...そんな顔すんのか....。」

偶然にも同じような二人の言葉が重なる。

「へ？」

二人は互いの顔を見合わせてアイコンタクトを取る。
先陣切って話し出したのは高木だ。

「いや...。伊野尾くん、見たこと無いようなすごく優しい慈愛に満ちた顔してたから...びっくりした。」
「.....大事なんだな。」

高木の横で大きく頷いていた薮がポツリと零す。

「そう、だね...。大事。」

まっすぐ言われて改めて思う。
俺にとって、知念はとても大事なんだって。
声にして改めて感じる。
大事にしたい存在なんだなって。

「俺が...守ってやりたい。」

まるで決意表明のようだ。
たった一か月そこらで、こんなにも大きな存在になるものなんだな。

「はぁぁぁ。....そこまで意思が固いなら何も言えねーじゃねーか。」

薮は呆れたような口調で苦笑い。

「ほんとだよね。...でも、伊野尾くん、なんか良い顔してる。」

相変わらず優しく俺に笑い掛けてくれる高木。

「二人とも.....ずっと黙っててごめん。ありがとう。」

俺、本当に素敵な親友を持った。
薮も高木も、結局はいつだって俺の味方でいてくれる。
そのかわり俺だって何があっても二人の味方だ。

「ところでさ、俺たちだけで良かったの？打ち明けるの。結子もいた方が........」
「あー！！知念！ほら、顔洗っといで！涙でぐちゃぐちゃ。可愛いお顔が台無しだよー。はい！いってらっしゃい！」

知念の背中をポンポンと軽く押しながら、行ってこいと促す。
知念は素直だから何も疑うことなく向かってくれた。
いや焦るわ。

「え？なに？ダメだった？」
「いや.....ダメってわけじゃないけど,,,,,,、彼女いること知らないから...さ、その...ちょっとまだいいかなって......うん。」
「なんで？」
「え？なんでって......まあ、ほら、思春期だし...さ。」
「答えになってねーわ。」

そんなやり取りをしていると知念が戻ってきた。
俺は目で「言うなよ」と二人に釘をさす。

「それはそうとさ。そもそも、なんでこういうことになったの？親戚.....ってわけでもなさそうだし。もともと知り合いだったの？」

高木が本題へ入りやすいようにパスを出してくれた。

「あー、うん...。まあ、ちょっと色々複雑なんだけどさ......。」

知念が初めてうちに訪問してきた時のことから始まって、幼い頃のことやひとつ前の親戚宅でのことなど、時折知念も会話に交えながら、今までの経緯を話した。