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選択 ページ25

俺は平静を装いながらも内心物凄く動揺していた。

「........あ、あの.........いや、さ.....嫌いだったら一緒に住んでねーし.......さ...........その......好きは好きだよ....。」
「........どっちの...好き.....?」

ポツリと呟く彼の聞き取れるか取れないかの声に「え?」と反応して隣を見ると「なんでもない...。」と返ってきた。

「あ、着いたよ、伊野尾先生。」
「え?あ、うん...。」

何事もなかったかのように「行こ!」と笑顔で話す彼の態度に、若干困惑しながらも安堵する。
こうして俺は常に核心を避けて誤魔化しながら、時に誤魔化されながら、彼と向き合っていくのだろうか。


店内に入った彼は一目散にある場所へと向かった。
スマホケースのコーナーだ。

「なに?カケース買いに来たかったの?」
「うんっ。だって、落として傷つけたりしたくないもん。どれがいいかなぁ....。」

真剣な顔であれでもないこれでもないと吟味している彼の横で、俺もそろそろ変えようかなと緩く陳列を眺めながら一つのケースを手にした。

「伊野尾先生はそれが好き?」
「え?ああ、まあ、シンプルなのが割と好きかな。」
「伊野尾先生も買うの?」
「んー、なんか良いのあったらそろそろ変えてもいいかなってくらいには見てるよ。」
「.....んー.......僕、伊野尾先生とお揃いにする!」
「ええ?お揃い?!...ふふ、いいよー。どれにしよっかー。」

数ある中から何個か手に取り、一緒に選ぼうと彼に差し出す。

「...伊野尾先生が選んで?」
「えー?一緒にい選ぼうよ。」
「先生の好きなものがいい。先生選んで。」

悩むわけでもなく間髪入れずに答えが返ってきたところをみると、“俺に選ばせる”ことは端から決めていたのだろう。
いつものぽやぽやふわふわした雰囲気とは違い、何というか....少しピリッとした雰囲気を漂わす彼に違和感しかなくて、「どうしたの?」と声を掛けた。

「え?」
「なんか知念、いつもと違うからどうかしたのかと思って。」
「.....そうかな?なにもないよ?」
「そっか。」

一瞬の間と僅かに揺らいだ瞳が、何かあるのだということを物語る。
それでも何もないと言い切るのは、俺に知られたくないものだからなのだと察して、それ以上は聞かないことにした。

甘えること→←悲しそうな微笑



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作者名:ちぃねずみ | 作成日時:2017年11月5日 23時

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