伊野尾先生と僕。【2】 (ページ24)

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悲しそうな微笑ページ24

「...伊野尾先生？どうかしたの？」

ぼーっとしていた俺に心配そうな顔。

「いや、なんでもないよ。そろそろ行こうか？知念。えっと.....けーとくんも..一緒に行くのかな？」
「あ、いえ。俺は知念が寂しくないように一緒に待ってただけなんで。」
「あ、そうなんだ。待っててくれてありがとね。」

そう言いながら少しホッとした自分がいて、親バカかよ、と自身に突っ込む。

「けーとっ、一緒に待っててくれてありがとう！また明日ね！」

笑顔で手を振る知念に、彼も「また明日ね、ちーちゃん！」と嬉しそうな笑顔で答える。
俺にもちゃんと笑顔で会釈をしてくれる彼は、しっかり躾がなされているんだろう。
なかなかの好青年で取り敢えず安心した。

学校を後にし雑貨屋へと向かう車内の中、知念は今日あった出来事を楽しそうに話してくれた。
その話には必ずと言っていいほど「けーと」が登場する。
「けーとが」「けーとと」「けーとに」「けーとは」
それはもう、女の子が好きな男子の話をするように。

「知念はけーとくんが好きなの？」

信号で停止した瞬間に思わず溢れてしまった心の声。
彼は「え？」とキョトンとした顔でこちらを伺う。

「...あ、いやっ、なんでもない。」

誤魔化しようのない俺の慌てぶりを不思議そうに見つめていた彼の表情がほんの少し曇った。

「いや、ほんと、何もない.....」
「伊野尾先生....。」
「...ん？」
「...いつも言ってるけど........僕が一番好きなのは、伊野尾先生だよ......？」

俺の取り繕う言葉を遮った彼の顔は、とても悲しそうに微笑んでいた。

「...ちね....」
「青になったよ。」

タイミング悪く信号が変わり、彼の視線が前に向き直り運転再開を促す。
車を走らせる中、しばらくの沈黙。
この空気をどうしたものかと思考を巡らせていると、「伊野尾先生」と前を向いたままで彼が口を開いた。

「....なに？」
「......僕は....伊野尾先生が好き........。.......でも、この気持ちが........伊野尾先生の邪魔になるなら........もう言わない......。.........伊野尾先生は..........僕のこと......好き........？」

チラリと彼を見やると、真っ直ぐに前を見つめたままで表情がわからない。
運転しながらな俺もまた彼をじっと見ていることはできず、すぐに前を向てしまった。