伊野尾先生と僕。【2】 (ページ22)

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「えっ....？なに...？」

四角い箱を手渡す。

「開けてみて。」

一応プレゼント用にお願いして包んでもらったそれをゆっくり開けていく。

「っ？！」
「前のはもう向こうに返しちゃったからさ、新しいの。やっぱり持ってる方が便利だし、俺が安心するから。」
「いの.....せんせ......。もらっていいの....？」
「いいよ。それは知念のだよ。」

箱からそっと大事そうに出されたものは新しいスマートフォン。
どれにするか迷って、結局俺と同じものにした。

「これで何かあってもすぐに連絡取れるから安心でしょ？」
「ありがとう、伊野尾先生。....すごく嬉しい。先生とお揃い。」

ぎゅっと両手で胸に押し当てる。

「電源入れてみて。全く設定してない状態だから、色々一緒に設定しよ。」
「うん！」

両手で大事そうに持っているスマホを眺めて「ドキドキするね」ときらきした笑顔で言うと、恐る恐る電源を入れる。

「わ....っ。ついたよ、先生！どうすればいいの？」

新しいおもちゃを与えられた子供のように無邪気な顔をして、操作の仕方や設定の仕方を聞いてくる。
元々頭のいい子だから、少し教えただけでもう使い方をものにしていく。

「もうだいぶわかった！...伊野尾先生、連絡先....交換してくれる？」

こちらを伺うように聞いてくるが、「いや、そこメインでしょ」と内心で突っ込みながら「もちろんいいよ。」と返事してやると、ぱあっと笑顔いっぱいになり嬉しそうに交換操作をする。

「これで先生とずっと繋がってる気分になるね、ふふ。」

それから写真を撮ってみたり、アプリを試してみたりと、ひと通り触って遊んだあと、「あまり使い過ぎないようにね。」と伝えれば「はい！」と優等生な返事をしてから「伊野尾先生と一緒にいるときは使うことないから大丈夫！」と無自覚な天然あざとさ全開でそんな一言を付け加えてくれた。
彼の言葉はいつも俺に対して真っ直ぐだ。
それがくすぐったくもあり、心を温かくする。

「待ち受け、先生の写真にしようかなぁ。」

ボソッと放つ一言。

「うん、それはやめようか。」

間髪入れずに突っ込んでおいた。