伊野尾先生と僕。【2】 (ページ16)

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久しぶりの再会ページ16

誕生日の翌日、知念が学校へ行っている間に手間の掛かる資料整理をしていると電話が鳴った。
薮からだ。

「はいはい？」
「よお、元気に仕事捗ってるか？」
「今この電話に邪魔される前までは捗ってたけど。」
「んだよ、つれねーな。」

電話越しにケタケタ笑う彼の横で、聞き覚えのある女性の声が聞こえる。

「......薮....結子と一緒？」
「お？勘がいいねぇ。お前の彼女に捕まってんだわ。どうにかしろ。」
「......あー....悪りぃ。今どこいんの？」
「会社の横にあるいつものカフェ。ダッシュで来い。」
「....わかった、すぐ行く。」

あー、またすっかり忘れてた....彼女のこと。
別に嫌いなわけではないし、良い子で気も合う。
なのに最近存在を忘れてしまう。
最近、というよりは知念と一緒に暮らし始めてからと言ったほうが正解だろう。

「怒ってっかなぁ...。」

俺は若干憂鬱になりながらも出掛ける支度をして急いでカフェへと向かった。

カフェに着くと一番奥の席に彼女の姿を見つけた。
向かいには薮......と、誰かいる？
のそのそとテーブルに近づく。

「あ、伊野尾くん！」

真っ先に俺に気がついたのは薮の横に座ってる奴。

「...高木？！」
「久しぶりだね、元気だった？」

そう言って優しい笑顔を俺に向けてくれる彼は、高木雄也。「ぎ」ではなく「き」だ。
彼もまた薮同様に高校からの親友。
ただ薮と違うのは、実は密かに俺が片思いをしていた相手でもある。
そして多分、高木も俺のこと好きだったと思う。
少し良い感じになりそうな気配がなかったかといえば嘘になる。
まあもうお互い過去形ではあるけど。

「元気だったよ、高木は？」
「超元気！」
「ふふ、だろうね。」

この懐かしい感じ、なんだか擽ったい。

「伊野尾くん、座りなよ。なんか頼む？」
「え、あ、うん、ありがと。」

俺は彼女の隣で高木の向かいでもある席に座って、取り敢えずコーヒーを頼んだ。

「相変わらずだね、伊野尾くん。」
「ほえ？」
「相変わらず眠そう。」

ニコニコ笑いながら俺に話し掛ける高木。

「おい！俺もいるっつーの！」

そんな俺たち二人だけのやり取りに痺れを切らせて薮が割って入る。
高校から変わらない。
男三人でケラケラ楽しんでると、さらにそれに痺れを切らせた彼女が「ちょっと！私もいるんだけど！」と割り入ってくる。

「あ、悪りぃ悪りぃ。」
「ごめんね、女性一人放ったらかしちゃって。」

薮の絶対悪いと思ってない返事とそれとは対照的な高木の返事。