ピアノとバレー (白布 賢二郎) 3

悲しい恋 ??side ページ42

高校に入って、




好きな人が出来た。






その人は、





冷めた大きな切れ目で、



肌が白くて、女の子のように綺麗。



勉強はもちろん何事も器用に、そして真面目にやりこなす。





そんな女子の憧れの的に、私も恋に落ちた。





でもこの恋は、叶う見込みのない、悲しい恋。







なぜなら、私が好きになったのは、









その人が、他の女の子に向けた笑顔だから。









それはその人が普段浮かべる笑顔とは全く別の、



特別な笑顔だった。







私にはどうしてその笑顔が特別なのか、分かってる。



気付いた時は、泣きたくなったけど。







鮮明に思い出せる。





頬杖を付いた彼。



少し目を細めてて、



口角は柔らかく上がっていて。



下がり気味の眉が、




いつもの彼からは想像できないほど優しい表情だった。





そんな顔するんだ、って。





心臓の音の速さに驚いた。






それと同時だった、気づいたのは。




1つは、自分に生まれた恋心。





もう1つは、









この人も、恋をしているんだ、ということ。









これは、好きな人に向けた笑顔だということ。









「奈々。」



奈「・・・・・、」



「奈々！」



奈「・・・え、あ、結衣、」



結「もう・・次移動だよ。行こ。」



奈「う、うん。」



結「・・・また白布くんのこと見てたの？」



奈「え、！？う、うん、ううん・・・」



結「どっち？」









好きな人に好きな人がいたって、




振り向かせればいい。





そう考える人もいるかもしれない。




でも、私にはそんなのできない。






私は特別可愛くないし、



性格だってただのミーハーだ。



この高校にもギリギリで入ってきたから、勉強もここではあまりできる方ではない。



つまりこれといった取り柄のない私は、





自分に自信がない。





そして、





私がこの恋を叶わないと思うのは、




もう1つ、大きな理由があるのだ。










「あ、華原さんいるじゃん。」



「華原さんまじ可愛いんだけど。」



「いいよなーああいう系。ナチュラル美人？」



「分かるわ、菅野さんもだよな。」









それは、








ライバルによる圧倒的不利。




そう、私のライバルは、





容姿端麗で、



立ち振る舞いも淑やかでたおやかで、



勉強も出来る。





白鳥沢きっての美少女と名高い、









華原あかりちゃん。

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