優先したいもの ページ33
『はぁ・・・っ、』
手をついた第4体育館の扉は、少しひんやりとしている。
・・・なんで、走ったんだろ。
少し火照った手をしばらく扉で冷ましつつ、息を落ち着かせた。
扉の向こうからは、ボールが床に叩きつけられる音や、男子高校生特有の低くて少し太い声が聞こえる。
・・・ほら、まだ部活中だよ。会えるわけない。
とぼとぼとちょうど木陰ができたベンチに歩き、座る。
スマホで時間を確認すると、まだ5時を過ぎたばかりだった。
・・部活が終わるのは・・6時半?ううん7時?
どちらにせよ長く待たなければならない、というのは明確。
私は俯き、爪を撫でた。
ローファーで走るなんてするから、少し足が痛い。
・・白布くんが出てくるまで弾いていれば、バラード10回は反復できる。
その方が効率的だと、頭では解っているのに。
・・・それでも、身体が動かないのは、どうしてだろうね。
『・・・・、』
さら、と髪を擽って、弱いけれど、心地よい風が吹いた。
・・・ピアノより、優先したいものができるなんて、
思ってもみなかった。
・
・
・
どれほど時間が経っただろう。
寝ているような、寝ていないような、
ぼーっと虚ろな頭を支えながらずっと座っていた。
ふと、顔を上げる。
『えっ・・・』
辺りはもう暗くなっていた。
空を見上げると、星が瞬いている。
・・今、何時?
体育館に目を向けたとき、
・・私は、気づいてしまった。
・・・体育館の電気がついていないことを。
『っ、』
さーっ、と血の気が引くのを感じる。
・・・まさか、私。
バレー部が出てきたことに気付かなかった・・?
それなら、もう・・
白布くんは、帰ってしまった・・・?
辺りに人の気配はしない。
つまり、そういうこと・・・
猛烈な虚無感に襲われた。
私は再び俯く。
・・・なにを、やっているの、私は。
自分に散々だ。
果てしなく深いため息をつきそうになった時、
「・・・何してんの?」
頭に置かれた重さと体温と共に、
聴き慣れた、聴きたかった声が聞こえた。
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おしお - いえいえ!こちらこそ要望に応えられずすみません・・・実は要望なんて初めてですごく嬉しかったんです。本当にありがとうございました。本当にごめんなさい。 (2019年5月7日 19時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 理由があったんですね! 何も考えずにコメントしてしまい、申し訳ありませんでした。 (2019年5月5日 9時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 他にも読者様の中に「夢主を自分の名前に変換したい。」と思っている方がいらっしゃいましたら、参考にしたいので是非コメントで教えて下さい。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 百花さん» ご要望ありがとうございます!夢主の名前を自動変換不可能にしているのには理由があるので、申し訳ないのですが少し考えさせて下さい。やり方は知った上です。本当にすみません。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 要望なんですけど、主人公の名前、自分の名前にできませんか? (名前)って入れればその人の名前に自動変換してくれるんですけど、もしやり方わからなかったようならごめんなさい。 (2019年5月3日 18時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おしお | 作成日時:2019年3月5日 19時