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卯くんside ページ32

ため息が出るほど美しい旋律と景色に溺れていた時、


ある、音に気がついた。


花火の音は、聞こえていない。


じゃあ、これは・・?



随分と速い、


どくん、どくん、と4拍子。



・・・これは、


・・鼓動の音?



思わず自分の胸に手を当てた、



・・違う、僕じゃない。


そんなに、速くない。



何故か、頬が熱い。


自分の頬に手を当てる。


・・・違う、これも僕じゃない。



・・・・じゃあ、これは・・



ある感覚に気が付いた。



・・・右手が包まれている感覚。


そこに、熱がこもっていて、


意識が、傾く。



だけど、離したくなくて。



・・・これは、



幸せで、



・・・これは・・、



ずっと、このまま時間が止まればいいなんて。



・・・こんなの・・!



僕は、思わず目を見開く。


・・彼女は、柔らかな表情で鍵盤に指を滑らせていた。



卯「!、・・・」



・・・“恋”、みたいじゃないか。



・・さっきの感覚は、全部僕じゃない。


じゃあ、


あれは・・・、



最高潮に達した第一主題。


彼女の手は敏捷に鍵盤の上を移動しつつ、裏打ちのアクセントをつけながらメロディーラインを浮き彫りにする。



・・・花火も、鼓動も、


全てが加速していく。



少し風が吹いて、


隣から、甘い匂いを感じた。



・・・止まれ。


こんなの、もう聴きたくなくて。



でも演奏は止まらない。



・・・手を、繋いだの?


・・一緒に、花火を見たの?



ふつふつと、黒い感情が溢れ出してくる。



・・聴きたくなかった。



僕は言う。



卯「・・・あかりちゃん。」


卯「誰のこと考えてる?」







あかりside




“誰のこと考えてる?”



そう言われて、


思わず鍵盤から手を離し、顔を上げた。



『・・・・、』



・・・誰のことを、


考えてたの?私は。



頭に浮かんだのは1人しかいなかった。




・・・そっか、


今、弾いていてとても心地よかったのは、



あの夜のことを思い出してたからなんだ。



・・白布くん。


・・もう、どんなことをしていても考えるのは君だけなの。



話せなかったことが辛いのも、あの冷たい目に泣きそうになったのも、



・・私が、君を好きだから。



なぜか、涙が零れそうになった。


そして、どうしようもなく今の状態が嫌になった。



ねえ、白布くん。



少しだけ、私のわがままで話を聞いて。



『・・ごめんね、私行かなきゃ。』



私は練習室を飛び出した。

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おしお - いえいえ!こちらこそ要望に応えられずすみません・・・実は要望なんて初めてですごく嬉しかったんです。本当にありがとうございました。本当にごめんなさい。 (2019年5月7日 19時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 理由があったんですね! 何も考えずにコメントしてしまい、申し訳ありませんでした。 (2019年5月5日 9時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 他にも読者様の中に「夢主を自分の名前に変換したい。」と思っている方がいらっしゃいましたら、参考にしたいので是非コメントで教えて下さい。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 百花さん» ご要望ありがとうございます!夢主の名前を自動変換不可能にしているのには理由があるので、申し訳ないのですが少し考えさせて下さい。やり方は知った上です。本当にすみません。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 要望なんですけど、主人公の名前、自分の名前にできませんか? (名前)って入れればその人の名前に自動変換してくれるんですけど、もしやり方わからなかったようならごめんなさい。 (2019年5月3日 18時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おしお | 作成日時:2019年3月5日 19時

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