初夏のさわたち ページ5
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side ryosuke
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梅雨が明けて、朝晩の涼しさがなくなり、コンクリートからの照り返しを受けて、暑さがじわじわと体力を奪う。
そんな季節がやってきた。
あっついなー…こんな日はどっか涼しい所で休んだりしたら、すっげー心地良いんだろうな。
外回りを終えて、次の商談までの間に出来た空白の時間。
『ごくろうさん。たまにはゆっくり休めば？次まで自由にしてていいよ』なんて松本さんからランチ兼休み時間を貰ったはいいけどさ…
どうしよっかな…
ふと並木通り沿いの映画館に目がとまる。
そういや…ちょっと恐そうな映画と歴史もので見たいのあったんだよな……
側まで行って、上映時間を確認してみたら、2つともほぼ同じ時間で、ちょうど次の商談までの時間内で観られそう。
どうしよっかな…と眺めていたら。
「こんにちは。」
隣から声をかけられた。
「映画、ですか…？」
正直、驚いた。
それは紛れもなく、俺が気になってる…つか、もはや好きな秘書課の子で。
いつものパリっとしたスーツではなくて、少しフワリと広がるフレアスカートを履いてて…足元はスニーカー。
いつもとは違う、ラフで可愛い姿に、ドキッともしたけど、もしかして…デート？なんてモヤモヤした気持ちも生まれた。
それを誤魔化して、笑顔を作る。
「あーうん…。次の商談まで自由時間貰っちゃったから。えっと…」
どう聞いていいか分からないなんて思ってる俺には気が付いてなさそうで、いつものニコニコ笑顔でそうですか、と答え
「私は今日は仕事がお休みだったので」と映画館のポスターを観始めた。
「…興味あるの？」
俺の問いに、少しだけ俺を見てニコッとまた笑う。
本当にこう言うちょっとした笑顔が可愛いんだよな…
「私、こっちの少し恐そうなのとこっちの歴史もの…どちらか観たいなーって思ってて。」
うそっ！俺と同じじゃん！
「どっち観る？！」
いきなり言い出した俺に少し驚いたけど、またニコニコ笑顔に戻ってくれる。
「山田さんと観たなんて言ったら私、社のOLさん達に袋だたきに…」
「だからされないって(笑)」
挨拶みたいないつもの会話も何か嬉しくてくすぐったくて。
今だったら、良い返事、貰えそうな感じ。
「ねえ、じゃあさ。どっちか今観て、観なかった方は後日一緒に観に来ない？」
俺の提案に、彼女は含み笑いをしながら嬉しそうに、「はい」と答えてくれた。
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作者名：mee
作成日時：2017年7月5日 11時
