◆２１◆ side.you ページ21
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「…それで。私もああいう風になれたらなって、思ったの。私が大嫌いな、今の私が演じてる私は全部……あの浮気相手の女の子そのものなの」
「…………。」
ずっと、黙って私の話に耳を傾けてる櫻井くん。
時折唇の端がピクッと動いたりして、すごく不機嫌そう…。
まあそりゃ、そうなるよね…。
こんな話聞かされたら、気分悪くなるに決まってる。
「昨日……。可愛いだけで女を選ぶと痛い目見るってこと、バカ男に教えてあげてるって言ったじゃない？」
「あぁ、言ってましたね」
ああこれ。櫻井くんに言ったら絶対嫌われちゃうだろうな。
…いや、いいか。もう十分嫌われてるみたいだし。
これで櫻井くんがこのまま私を嫌いでいてくれれば…＿＿＿＿私は櫻井くんを嫌いにならずに済む。
どのみち失うものなんて、もう何もない。
「あれは…。私みたいな女を好きになる男に、元カレを重ねちゃってたの。可愛い女を演じて、ああいう洋服屋で欲しいものを好きなだけ買ってもらって。物欲が満たされたら、はいさよなら…って切り捨てる。それを繰り返すことで、元カレに復讐したつもりになってた」
「…………ひどい女ですね」
「そんなひどい女を好きになるバカ男がいけないんでしょう？」
「それがあなたの元カレに対する復讐、ですか。何の罪もない男を身代わりに…」
「さすがに幻滅した？」
「…………。」
当たり前だろ、クソ女！くらい言ってくれるのを期待してたのに…。
櫻井くんは、はぁって大きなため息をついて。カウンターに突っ伏した。
驚いてる？呆れてる？軽蔑してる？
櫻井くんの顔が見えないのが、もどかしい…。
「二宮さんが、Aさんが特定の男を作らないって言ってた謎も…これでようやく解けました」
「あいつ…。いっつも余計なことばっか言って」
「はあああぁ。俺いま、自己嫌悪でどうにかなりそうです…」
「なんで？何で櫻井くんが自己嫌悪？私を嫌悪するなら分かるけど」
私の質問には答えず、カウンターに突っ伏したまま一人で何やらブツブツと言っている櫻井くん。
なんか…可愛いな。小さな子供みたいで、頭なでなでしたくなる(笑)
そんな櫻井くんのいつの間にか空になった丼を、翔くんフラれたのか〜！？って陽気なご主人がゲラゲラ笑いながら片づけてる。
あれ以来、ずっと怖くて…誰にも見せられなかった本当の自分。
だけどやっぱり。素の自分で話せる相手がいるって…_________すごく楽だ。
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作者名：りま | 作成日時：2016年8月22日 7時
