◆１８◆ side.you ページ18
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「それにしても意外ですね。Aさんがラーメン好きだったなんて。夜中にラーメンなんて、絶対太るしあり得な〜い！とか言いそうなのに(笑)」
「………バカにしてる？」
「まさか。Aさんの新たな一面が知れて何だか得した気分です」
そう言いながらも、こらえきれない笑いを隠すように口元に手を当ててにやにやしてる。
こいつ…。やっぱり後輩のくせに、生意気。
思わずムッとして櫻井くんを横目で睨みつけていたら、へいお待ち!っとタイミング良く運ばれてきた二つのラーメン。いい匂い。
「だってAさんとラーメンって、最も縁遠そうな食べ物っすよね。俺、この瞬間に立ち会えるの超貴重かも(笑)」
私とラーメンを見比べて、うひょーって一人で勝手にテンションが上がってる櫻井くん。
ガッカリするわけでも、驚くわけでもなく…。ちょっと嬉しそうなのは何で？
「やっぱり櫻井くんって…意味不明」
「えー？何でですかー？(笑)」
「どうせラーメン食べたいとか可愛くない女だなって、バカにしてるんでしょ？」
「え……？」
…分かってる。
男の人は大抵、可愛い女が好きなんだって。
そう。
可愛くて、程よく隙があって、ふわふわ綿菓子みたいな…甘ったるい女の子。
『お前…________可愛くないんだよ』
ずきん。
もう何年も前に、元彼から言われた言葉がふと脳裏によみがえる。
『お前は俺がいなくたって、一人でたくましく生きていけんだろ？』
痛い。
別れ際、あいつに言われた言葉の一つ一つが。
喉に引っかかってなかなか取れない魚の小骨みたいにチクチクと突き刺さって。
弱く、長く、ずっと痛めつける…______________。
「……Aさん？」
「………へ？」
「早く食べないと、麺が伸びちゃいますよ？」
「ああうん。そうね…」
櫻井くんが割り箸をパキッと割って私に手渡してくれる。
…なんだ。意地悪ばっかりかと思ったら、優しいところもあるじゃない。
「ありがと…」
「どういたしまして」
何だか変な空気になっちゃた。
またあんな昔のこと思い出して…。
いい加減あんな男のこと忘れればいいのに。私のバカ。
ラーメンのスープを一口飲むと、ふわぁって口いっぱいに味噌のコクと旨味が広がって。一瞬で幸せな気分になる。美味しい。
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作者名：りま | 作成日時：2016年8月22日 7時
