家を出て…… ページ28
振り返ると豪雨の隙間から見える母の顔、叫ぶ声。どれも聞く度に清々しかった。こんなのは初めてである。
傘もさせずにいる。
さしてみたけど、壊れてしまい、持っていても意味の無いものとなってしまう。
駅までは10分で着くのでもう気にするのもやめた。
駅に着いた。
着くと、信じられない光景が広がる。
「な、んで、……」
駅の改札を通ってからの事だった。
線路越しに家の車が見える。
何故いるのか、なんでこんなことになってるのか、聞きたいのはこちらである。
バレたくない、その一心だった。
乗る電車の陰に隠れ、すさささーっと走り、電車に乗る。電車には乗ってきてはいなかった。
バクバクいう心臓。
初めて裏切った高揚感。
何もかもが心を支配する。けど、私は諦めたくない。胸を静まり返した。
バレることなく電車には乗れたが、怖くて怖くて、手の震えが止まらない。まだ追いかけてきてはいないだろうか、次の電車に乗ってたりしないだろうか、と。
それぐらい簡単にしてくる親だということを知っていた。
集合駅に着いた。何事も無かったことが怖かった。
案の定である。
「お、父さん……」
電車ではなく車で先回りされていた。
私が見たのは父親、もしかして母親もいるかもしれないとただただ怖い。恐怖だ。
バス乗り場へと出る。
人生の終わりってこういうことを言うんだと思う、絶望した。
目の前を見ると金縛りを受けたかのように動けなくなる私。コツンコツンと歩いてくる女性。みつけた、という眼差しを向けてくる彼女は私の母親だ。
行くって約束したのに……
その思いばかりが募る。涙ばかり溢れ出る。
悔しかった。
「ほら、電話かしてやるから」
私のスマホを貸してやると言って差し出す母。
また、電話をかけた。また、泣いたまま。
「も、しもし、ごめん……捕まっちゃっ、た。着いたんだけどね……まさかの、待ち伏せ。海月くんは、もう、着いてる？」
『着いてるよ。そっか、残念だな。』
「じゃあ……近くにいるかもね。ごめんね、ほんと。」
『いいよ。』
親は少ししか話させてくれなかった。
悪い事をした犯罪者と英雄の警察官みたいな絵になった。肩を一掴みで掴まれ、自らの方へ寄せていき……初めて母親に触られることを恐怖と感じた。
私には何が悪いことなのか理解できない。
帰りの車、「フルーツタルト」で少し喋りながら、私は考えていた。
……監獄に戻される生活なんか嫌だ……そんなの苦しい、と。
ラッキーカラー
あずきいろ
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作者名：ぺんぎん(｡･θ･｡) | 作成日時：2018年1月16日 18時
