⇅ ページ25
⇊
────ゴッ
手が血で汚れきっているオレには聞いたことがある音だった。頭を鈍器で殴る音とバタン、と人が倒れる音。オフィスチェアから立ち上がり、何も羽織らず事務所を飛び出して電話が繋がっている先に返事がなくとも何度も呼び掛けながら、車を葛原の家に向かって走らせる。
もう関わらないように、と家からも事務所からも遠くしたのが仇となった。自分をクソほど恨んだ。メッセージだけですぐ返信していれば、最初の電話にすぐ出ていれば、後悔しても仕方が無いことばかりで、お願いだからもう死んでくれるな、と願った。
通話は車に乗る前に切られた。
こんなときに限って雪が降って、事故が起きたのなんだのって道が渋滞していやがった。またオレは間に合わないのか赤音さんも、そしてAも。
#
家に着いたのは約1時間もあとだった。けたたましいサイレンが響き渡っていて、何台もパトカーが止まっていた。オレがこの場にいるのは危険だと分かっていても、今はそんなことを気にしていられるほど冷静じゃなかった。それに幸運なことに、夜の暗闇と走って来たのもあって髪も崩れて刺青も見えてなかった。
「おい！！葛原は生きてるのか！？」
「ッ！？お、落ち着いてください…！！犯人はもう捕まって、」
家の前に立ち塞がる警察官の胸ぐらに掴みかかってオレが問い詰めれば、ソイツは全く聞いてもいないことを返す。あぁ、イライラする。胸ぐらを掴む手が強くなっていく。
「ンなこと聞いてねぇよ！！ここに住んでた葛原Aはどこに行った！！」
「そっ…その方ならッ！！───中央病院に搬送されたとしかッ…！！安否はまだ…」
すぐにその警察官の胸ぐらを掴む手を離して、またすぐに車をその病院まで走らせた。暗くなった病院の裏口の受付に葛原の名前を言えば、葛原のスマホを持った看護師がオレの所まで向かってきた。
「九井一さんですか？」
「…はい、」
「葛原さんは今手術中です。ご両親などの連絡先は分かりますか？葛原さんの携帯に登録されていないようでして…」
「ッ…もういないです」
あぁ、なんでこんな所でオレは葛原のこんなことを言わなきゃならないんだ、いや全部引き金はオレだ。自業自得だ。
「…分かりました。こちらでお待ちください」
葛原のスマホをオレに渡して看護師は去っていった。暗い廊下、手術中という赤いランプだけがオレに残った光だった。
⇈
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1096人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
m(プロフ) - 初コメント失礼します。本当に素晴らしいお話でした。完結前に出会えなかったことは悔しいですが、本当に大好きな作品になりました。人間的なストーリーで心が引き込まれ、感動しました。この作品を作っていただき、残していただき、本当にありがとうございます。 (2023年2月19日 12時) (
レス) @page33 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊い - 思わず涙がこぼれてしまいました、、、。切ないしもうなんかよかったです。私もテストヤバイ、、、、、 (2021年11月30日 1時) (レス) @page33 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - セツナさん» 読んでくださる方々のおかげで無事完結出来ました🥰感動していただけたんですか…めちゃくちゃ嬉しいです🥺❣️こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました❕ (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 楸さん» あええ大好きなんて悶えます…🤦♀️私もちょっと寂しいなって思ったりしているのでまたココくんの作品書きたいと思ってます❣️頑張ります！！最後まで読んでくれてありがとうございました🤍 (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - アオさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございました！！バンドエンドもいかがだったでしょうか…😌喜んでいただけていたら嬉しいです！ (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パチンカスヱ x他1人 | 作成日時：2021年11月12日 0時
