6,迷惑 ページ15
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私の口からわっと川が決壊するように九井さんに身勝手に想いを簡単にも口からこぼれ落ちてしまった。言ってどうしたい、とか恋人になりたいとかそういう関係を求めたとかそういう事は何も考えてなかった。
「私、九井さんのことが好きかもしれないです」
九井さんは聞こえてもいないように、私の手を引っ張って歩くスピードも表情も変わらない。私が、九井さん、と話し掛けると歩幅も短くなりゆっくりと止まって私の方を見ずに言った。
「勘違いだ」
「…え、?」
九井さんに私ははぁ、と白く大きな溜め息をつかれる。勘違い、と言ったのだ。私が九井さんが好きだということに対して。手先が震えた。もう、この後彼の口から紡がれる言葉が聞きたくない。
「それは勘違いだ。お前は恋愛をしたことないから、一番近くにいるオレは他とは違うのは分かる。でも、それは恋じゃねぇ。高校生が先生を好きになるみたいなもんで後から目が覚めるんだよ」
「……っ、」
「オレにも迷惑だ、忘れろ」
涙が溢れた。やっと気付けた自分の心を勘違いだと決めつけられて、それを大好きな人に否定されてそもそも想いを伝えることさえ彼には迷惑な私の
「すみません、ごめん、なさい九井さん。…すぐ、忘れます」
涙を頬を伝って九井さんが巻いてくれたマフラーを濡らしてしまう。どうして、私変なこと口走っちゃったんだろう、ヒナちゃんの話を聞いてしまったせいで仮初でもいいからって欲しくなった…?違う、彼女はなにも悪くない。そもそも、主人である九井さんがただの女又隷の私を好きになってくれるなんて身の程知らずにも程がある。
馬鹿だなぁ、私。九井さんが私のことを好きかもしれないって期待してたのかなぁ。
「それで冷やして寝ろ」
「あ、…ありがとうございます」
家に着くと、保冷剤を包んだタオルを渡されて九井さんは自分の部屋に戻って行ってしまった。本当に私の最後になるんじゃないかと思う告白は無かったことにされてしまった。
「中途半端にやさしくしないでほしいです」
面と向かって言えるはずない初めて言った彼の悪口。きっと九井さんはいつも通り過ごしてしまうんだろうなとなんとなくわかる。私も気の迷いだと忘れてしまおう。
捨てられるのだけは嫌だから。
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m(プロフ) - 初コメント失礼します。本当に素晴らしいお話でした。完結前に出会えなかったことは悔しいですが、本当に大好きな作品になりました。人間的なストーリーで心が引き込まれ、感動しました。この作品を作っていただき、残していただき、本当にありがとうございます。 (2023年2月19日 12時) (レス) @page33 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊い - 思わず涙がこぼれてしまいました、、、。切ないしもうなんかよかったです。私もテストヤバイ、、、、、 (2021年11月30日 1時) (レス) @page33 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - セツナさん» 読んでくださる方々のおかげで無事完結出来ました🥰感動していただけたんですか…めちゃくちゃ嬉しいです🥺❣️こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました❕ (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 楸さん» あええ大好きなんて悶えます…🤦♀️私もちょっと寂しいなって思ったりしているのでまたココくんの作品書きたいと思ってます❣️頑張ります!!最後まで読んでくれてありがとうございました🤍 (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - アオさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございました!!バンドエンドもいかがだったでしょうか…😌喜んでいただけていたら嬉しいです! (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月12日 0時