Ep.6-2 ページ24
Side.目黒
目の前でまっすぐ俺を見つめるAちゃんはものすごく真剣な顔をしていて、喉に言葉が詰まってるように見える。
『もう一回聞くけど、目黒くん私のことが好きなんだよね…?』
「うん、好き。Aちゃんは?」
告白したは良いけど、彼女から返事を聞くのが怖い。
もし、断られたらとか考えるだけで目の前が真っ黒になりそうになる。
『ちょっと座って良い?』
そう俺に声をかけ隣に腰掛けてくる。
周りを見渡し2人だけなのを確認し、マスクを外した。
Aちゃんの方を向くと、薄い唇を閉じてんーーと言っている。
いちいち仕草が可愛い。
『わたしも目黒くん好きだよ。優しいし、話しやすいし』
彼女の口から出た好きって言葉を拾って、自分の中に落とす。
脈なんてないと思っていたのに。
「え…マジ!?本当に?これって両思いってこと?」
先程の緊張とはまた違う高揚感が俺を包む。
自然と上がってしまう。
「付き合ってくれるってこと?」
質問ばかりになる俺を見て、Aちゃんはふっと困ったように笑う。
『恋人になるのは目黒くんのファンの子達に悪いよ。』
「両思いなのに、付き合えないってこと?」
『できるならお付き合いしたいよ。一緒にいて楽しいし。でも目黒くん今大切な時期でしょ、絶対。邪魔になりたくないもん』
Aちゃんはどこまでも俺の事を想って言葉を紡いでくれる。
笑えてない俺の顔を覗き込んで、目黒くんと優しく名前を呼ぶ。
彼女の方に顔を向けると、両手で顔を包まれる。
どこまで俺を引っ掻き回すの。
『目黒くんが有名になって、綺麗な女優さんとかモデルさんとかと知り合っても尚私のことが好きだったらまた告白して?それまで、1番のお友達でいさせてね』
「っは…何それ勝手すぎじゃない?それまで俺の事好きでいてくれんの?」
『勝手でごめんね。好きでいるよ。約束する』
彼女の目には涙が溜まっていて、頷くしかなかった。
「デビューしたら。デビューしたらまた告白させて。」
伝えてない、来月のデビューの話。
少しずるい事をしてるなって思いながら提案する。
『んー分かった。その時は、ちゃんとお返事するね!デビューしたらお祝いだね〜』
少ししんみりした空気を壊すかのように明るい振る舞うAちゃん。
ごめんね、手放すつもりないから。
その日は彼女を家まで送りバイバイした。
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作者名:Emma | 作成日時:2023年2月3日 10時