PARACAGE 9th【ars】 (ページ41)

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引っ越しを間近にしたある日、夕食の後の縁側でニノくんが煙草を燻らせていた。

翔さんは部屋に戻って、雅紀くんはお風呂。
智くんはソファに寝そべってお腹にニゴを乗せてる。

私はコーヒーを淹れたマグを3つ持って、まず智くん用でローテーブルに1つ置いてからニノくんの隣に座った。

「コーヒー、いる？」
「いる」

彼の横にマグを置いて、自分のコーヒーを啜る。
桜はとっくに散ってしまって花絨毯になってた庭も、もうすっかり地面が見えてる。

「縁側、好きだったなー」

脚をブラブラさせながら言う。
この家で一番好きな場所だったかもしれない。

「ニノくん、最近どう？」
「は？何なの、突然」
「どうなのかなー？って思っただけ」
「普通じゃない？山も無ければ、谷も無い」

平坦よ、って笑うと吸い殻を灰皿にグリグリ押し付けてコーヒーを飲んだ。

「でもまぁ、平坦で良いのかな。アップダウン激しいのは面倒臭いし」

ニノくんが今、どんな状況なのかは分からない。
あれからコイバナなんかしてないし、ニノくんの雰囲気からは何も読み取れない。
でもきっと、私なんかには読み取らせないようにしてる感じにも見える。

「...ニノくん、もう恋はしないの？」
「え？」
「あ...別に言いたくないなら良いんだけど！ちょっと心配ってゆーか...」
「うわー...Aに心配されてるとか、オレも終わったな...」
「ちょっと、どういう意味！」

腕にグーパンチしたら「暴力女！彼氏に振られてしまえ！」って言われた。サイテー。

「ってゆーか、突然なんのよ」
「もうゆっくり話せなくなるのかなーと思ったから...」
「オレの恋愛相談にでも乗ってやろうと思ったワケ？」
「相談するような事があるの！？」
「ワクワクした顔すんなや」

今度は私がデコピンされた。
これが結構、本気で痛い。

「残念ながら、なーんにもありません」
「え、そうなの？」
「実はお前の事が好きだった」
「......は？」
「とかも、神に誓って1億％有り得ないし」
「1億って...小学生か！」
「Aもたいがい小学生だけどねー」

ガンの飛ばし合い。
いつも通り、すぐに飽きる。

「でもまぁ、Aが居たら退屈しなかったよ」
「ニノくん...」
「男女の友情って都市伝説じゃなかったんだなー」
「うん」
「全然、そそられないもん。Aが裸で寝転がっててもスルー出来る自信がある」
「おい」

私達の会話が聞こえてたらしい智くんが「それは無いでしょー」って笑った。