PARACAGE 9th【ars】 (ページ30)

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310.これから。ページ30

「あ、そうだ」

雅紀くんがちょっとだけ真面目な顔をした。

「実は俺、モデル辞めるの」

彼が言うと、翔さんは「は？」と手に持ってた色紙チェーンをポトリと落とす。
その落ちたチェーンを拾ったニノくんは、「いやいや、本気で言ってんの？」と信じてない様子で薄く笑ってる。
智くんもビックリしたのか雅紀くんを見たまま口がポカンと開いてしまってる。

「Aちゃんにはもう話したんだけど...」

ビックリ顔で智くんがこっちを見たから、黙って頷いた。

「あ、それから潤ちゃんにも話してた」

え...？
潤くんに...？

潤くんは黙ってシャンパンボトルをテーブルに置いて、またキッチンへ入って行った。

「ロンドンから帰って来た時、俺潤ちゃんに怒られたでしょ？そん時にね」

あの時...雅紀くんが潤くんの部屋へ話に行った時だ。
そんな話、してたんだ...。

「ちょっと雅紀、こっちに来なさい。詳しく話を聞かせろ」

翔さんがダイニングに立ってる雅紀くんを手招いて、リビングへ呼ぶ。
彼は少し緊張した面持ちで、そっちに移動してラグに上にペタンと座った。

「どうしてモデルを辞めるのかは、後でゆっくり聞くとして。今すぐに問いたいのは、お前の今後だ」
「無職になる気か？ってコトだよね」
「簡単に言えば、そうだな」
「大丈夫。ちゃんと就職先は見付けてあるから。モデル辞めたら、すぐに一般企業で働くよ」

フフッと雅紀くんが笑って、厳しい表情だった翔さんの顔色も変わる。

「前勤めてた会社に、プレスで戻る事になったの」

その言葉に真っ先に反応したのは、もちろん

「はぁ！？聞いてねぇし！」

ニノくん。
目を真ん丸にしてる。

「って事で、また同僚になるから！よろしくね？ニノちゃん」
「やだやだやだ！はっ！？何で！？」

握手を求めてる雅紀くんの手を、ニノくんはパンパンと叩いて払ってる。
それを見て翔さんは安心してるようだし、智くんは「仲良いねぇ」って言ってニノくんに「どこがっ！」って言い返されてる。

...あれ...？ちょっと待って。
潤くん、アキラさんのショーの日家に居た私を見て何て言った...？

私は、賑やかなリビングから立ち上がり早足でキッチンの中へと入って行った。

「潤くんっ...！」
「何、手伝いとかなら別にいらないけど」
「潤くんは雅紀くんがモデル辞めようとしてるの知ってたから、あの時...」

私が言うと、彼は小さく息を吐いた。