PARACAGE 8th【ars】 (ページ7)

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252.凛々しい。←11.20 ページ7

サービス業に従事してる者の連休と言うのは、欲しい時に貰えなくって別にいらない時にポコンと入ってたりするもので。
今回の二連休は、完全に『いらない時』のそれだった。

あれから雅紀くんとは、仕事の事に関しては何も話して無い。
...と言うか、彼と顔を合わせていない。
帰りが毎晩遅いらしくて、ハチ公をしたくても『遅くなるから先に寝ててね』って雅紀くんからLINEが入って来る。
連絡をくれてるのに起きて待ってるのは逆に気を使わせてしまう気がして、彼が帰って来る前に私はいつも部屋に戻っていた。

そのまま、翌日には雅紀くんが出発するってゆー日になって

私は無駄な二連休。

もちろん、雅紀くんはお仕事。
平日だから他の皆もお仕事だし、何なら智くんも出版社の人と打ち合わせだって珍しく出て行った。

良い天気なのに、広い家に一人。

「......おーい、ニゴー、ニゴニゴー」

呼んでみても、返事も無ければ姿も見えない。
きっと、どこかに居る彼女に会いに行ったんだ。

「......」

散歩でもしよっかな...。
家に居たら、ちょっと気分が滅入って来る。
そうだ、コンビニでケーキでも買って来よう。

私は部屋着のワンピースにロングカーディガンを羽織り、首元にグルグルとストールを巻いて家を出た。
スマホで音楽を聴きながら歩く。

桜香寺の前を通る時にチラっと中を覗くと、戸が開かれた本堂に居た翔さんがたまたまこっちを見ていて目が合った。
慌ててイヤホンを外す。

「Aさん、お出かけですか？」

ちょっと大きな声で私に問い掛けながら、こちらに歩いて来る。

「お出掛け...って程では無いんですけど、気分転換と言いますか...」
「そうですか」
「翔さん、やっぱり凛々しいですね」
「えっ！？」
「それ」

目の前までやって来た翔さんは、作務衣では無く袈裟を着ている。

「あぁ！アハハ、今日は父が不在なんで...」

やっぱり、照れ臭そう。
似合ってるし、何なら貫録もあるから全然照れる必要無いのに。

「Aさん、もし時間あるなら寄って行きませんか？」
「え？」
「僕とお茶でも、どうですか？」

ニッコリ微笑む翔さんが、私の返事を促すように小首を傾げた。

「でも、良いんですか？」
「いけないなら、最初から誘いませんよ」
「フフッ、じゃあお言葉に甘えて」
「そうぞ、甘えて下さいな」

ひらりと袈裟を翻し、翔さんが桜香寺の中へ入って行く。

私もその後ろをついて行く。