PARACAGE 8th【ars】 (ページ33)

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278.ズルい三人。ページ33

自分の感情がよく分からない。
よく分からないけど、泣きそうになって来て眉間に力を入れた。

「Aが雅紀の部屋から出て来た時、俺、怒ってるみたいだったってお前言ったよな？」
「......うん」
「あれ間違ってないよ、怒ってた。ってゆーか...嫉妬だよ、嫉妬。一瞬で目が覚めたから、あん時」
「......」
「でも、Aが雅紀を好きって分かって、まぁ雅紀も煮え切らないにしても本気でAのコト考えてそうだなぁって思って」
「......」
「あー、そっかー、そうなんだなー...って俺は失恋を自分で消化してたわけよ。一応」

潤くんが失恋って似合わないな...とか、物凄く他人事のように考えてしまう。
その相手が自分だなんて、どうしても信じられない。

「なのに、こんな中途半端な関係見せられたら諦め切れないじゃん」
「......」
「お前は雅紀のコト、ズルいと思わないの？」

...確かに雅紀くんはズルい。
付き合ってるのかどうかもよく分からないし、気持ちをハッキリ伝えてくれた事も無い。
今回の仕事内容だって、教えてくれなかった。

だけど...

「私もズルいから...」

私だって、雅紀くんに何も伝えてない。
雅紀くんだって、私が彼をどう想ってるのか知らないんだ。
傷付きたくなくて、何も言えなくて、あんなに近付けたんだからもうこの関係を手放したくなくって。
なのに、勝手に不安になって。
結局、雅紀くんを独り占めしたいくせにそれを隠して。物わかりの良い子ぶってたんだ。

「...私、ズルいから...」
「A」

潤くんの髪が、頬に触れる。
背中に回された腕は、私を柔らかく包み込んだ。
胸を押し返したけど、彼の体は動かない。離れさせて貰えない。

「...潤くん、こんなコトされたら...」
「揺れちゃう？」

...私は雅紀くんが好きなのに。

「揺らそうと思ってるからね」
「......」
「お前らの関係を無理に壊そうとは思ってないけど、Aが心変わりするのは仕方無い事だろ？」
「...屁理屈だよ...」
「何とでも言え」

潤くんがククっと笑う。
その振動が、身体を伝わって来た。

「俺はAに幸せになって貰いたいだけ」
「......」
「お前にとってその相手が雅紀なら、俺は引き下がるよ」
「......」
「でもお前ら二人ともズルいみたいだから、俺もちょっとズルい男になる事にした」

「人の女に手を出すのはルール違反だけど」と呟き

潤くんが私の頭のてっぺんに、口付けた。