PARACAGE 8th【ars】 (ページ32)

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277.雨予報の日。ページ32

「...嘘だぁ...」
「嘘みたいだけど、本当なんだわ」

潤くんは困ったように眉毛を下げた。

「お前って全然飾らないし、スッピンでも平気で外を出歩くし、でっかい口開けて物を食べるし」
「......」
「俺らの結構際どい下ネタにも笑ってるし、何か面白かったんだよ」

あなた達の下ネタは、イケメン達のお戯れって感じで楽しませて貰ってました...。
何かごめんなさい。

「別にモテる自慢とかじゃないんだけど、俺って怖がられて距離取られるか逆にグイグイ女を見せて迫って来られるか、極端に言えばどっちかなんだよ」
「......うん」
「でもAはどっちでも無かった。良い意味で男みたいに馴れ馴れしかった」

良い意味でな！って、潤くんが強調する。

「気付いたら、可愛いとか思っちゃってた」

男みたい、って言われた後にこんな事を言われたら倒れそうだ。
もう、潤くんの事なんて見れない。

「可愛いと思い始めたら終わりだよなー、Aがするコト何でも可愛いし何でも好きだし」
「ちょ...潤くん、倒れそうだからもうその辺で...」
「倒れたら思いっきり介抱してやるから、どうぞ倒れて下さい」
「......いえ、頑張ります」

潤くんが、「マジかー」って可笑しそうに笑う。

「でも潤くん、ホント...いつからそんな...」
「いつからAを好きだったか聞きたいの？意外と欲しがるね」
「えっ！？違う違う！そんなんじゃなくっ...」
「シーッ！またカズが起きる！」

パコっと掌で口元を押さえられて、一瞬息が出来なくなった。
私が黙ると、その手はスルっと離れた。

「いつから...ってのは自分でも分かんないけど」

潤くんが静かに話し始める。

「ハッキリ覚えてんのは、会社に忘れ物届けてくれた時かな」
「...あぁ、書類」
「そう」

一度、夏の暑い日に潤くんの忘れ物を会社まで届けた事があった。
でもあの日、何かあったっけ...一緒にお昼ご飯食べたくらいだったと思うけど...

「折り畳み傘、持って来てくれたじゃん」
「...あ！午後から雨って予報だったから」
「あれ、嬉しかった。ホントに帰り雨降ったし」
「それは天気予報のお陰って言うか...私の手柄では無いって言うか...」
「手柄とか、そんなのどうでも良いわ。俺が嬉しかったんだから」

あの日の別れ際、手の代わりに折り畳み傘を振ってた潤くんの姿を思い出す。
大きな会社のロビーで、彼は私に向かって笑っていた。