PARACAGE 7th【ars】 (ページ32)

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242.雰囲気。←11.16 ページ32

彼の瞬きの音さえも、聴こえそうな距離。
耳を澄ませば、きっと聴こえる。

もう一度触れた彼の唇は、私の唇を軽く喰んで離れた。

濡れた唇に、雅紀くんの吐息がかかる。

心臓が潰れそうだ。
息をするのも苦しい。

雅紀くん、こんな目をするんだ...

そう思って、何だか泣きそうになった瞬間

グゥゥゥ...と、彼のお腹が鳴った。

「うわっ！？」

目をグリンと大きく開いた雅紀くんが俯いて自分のお腹を見る。
旋毛丸見え。

フフッと漏れてしまった笑いに、雅紀くんは恥ずかしそうに顔を上げた。

「ごめん、雰囲気台無しだー」
「ううん」
「何か俺、今日ずっと腹ぺこじゃない？」
「そう言えば、ずっとお腹空かしてる感じするね」
「アハッ！ご飯食べて、帰ろっか」
「うん、そうしよっか」

立ち上がった雅紀くんが、両手を引っ張って私の事も立たせてくれる。
肩に掛けられてるブルゾンを返すと「良いから良いから」って、丁寧に着させてくれた。

2人でバイクに跨ると、雅紀くんが振り返る。

「運転してる時はさすがに寒くなりそうだから、ギュウって抱きついて俺の事あっためてね」
「あ...うん、かしこまりました」
「ぎゅうううって、抱きついててよ？」
「うん...頑張ります」

お願いしまーす！って前を向いた彼の背中に、そっと抱きつく。

「まだ寒いなー、風が通るもん」
「.....」

もう少しぎゅうっと、抱きつく。

「んー...まぁ、とりあえずはそれでいっか！」

少し納得してない感じだけど、笑った雅紀くんがバイクを発進させた。

私達は、お昼に食べた中華繋がりでってラーメンを食べに行った。
バイクで風に吹かれて冷えてた身体を温めてくれる。

やっぱりたくさん食べる雅紀くんは、ラーメンに餃子も炒飯もセットにしてペロリとたいらげた。
いったいこのペッタンコなお腹のどこに入って行くのか...。
2人でビール飲みたい！って言いながら烏龍茶を飲む。

「今日だけで餃子めっちゃ食べたね！何個食べたかなー？」
「そっか、お昼も水餃子食べたもんねぇ」
「今度、餃子パーティーしようか。テラハウスで」
「いいね！楽しそう」
「前にやった時、おーちゃんが餃子作り上手かったんだよなー」
「器用そうだもんね！」
「翔ちゃんの作る餃子が個性的なの」

フフフーと笑う雅紀くんと、またバイクに乗って同じ家に帰る。

今度は、彼の背中にぎゅうううって、抱きついた。
雅紀くんの背中が、笑って揺れた。