PARACAGE 7th【ars】 (ページ27)

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237.イイコト。ページ27

朝ご飯の後はこれと言った目的も無くバイクを走らせて、気になったお店があったら入ってみる...みたいな感じだった。
服屋さんとか、ペットショップとか。
ホントに気になったら入る、みたいな。

中でも家具屋さんは凄く楽しくて、一時間くらい居座ってしまった。
雅紀くんが、そのお店でランプシェードを買って配達して貰う為に配送伝票を書いてるのをチラっと見たら当然だけど私と同じ住所。
冷静になると、それも凄い事だな...って思う。
だって、隣に居る彼はちょっと前まで雑誌の中でしか会えない憧れの人だったんだから。

家具屋さんを出たら、お昼を過ぎた頃だった。

「お昼...Aちゃん、お腹減った？」
「んー、そこまでは...」
「だよね、あのサンドイッチすげぇボリュームだもんね」
「でも雅紀くんはお腹減ってるでしょ」
「あ、バレてる？」
「痩せの大食いだもんねー」

どんなに食べても太らないって話してたのを思い出す。
いつだって雅紀くんは、ご飯を美味しそうにテラハウスの誰よりもいっぱい食べる。

「でも、こないだ事務所で怒られたんだよねー。食生活見直せって」
「えっ！？それ以上痩せなきゃいけないの！？」
「ううん、お肌の方。不摂生で荒れちゃってたから」

そう言って自分の頬をスルっと撫でた雅紀くんがオネェっぽく「やぁね、お肌の曲がり角」なんて言った。

「さぁてと、次はどんなお店に出会えるかなー？」
「次はどっかご飯屋さんに入ろ」
「え？でも、お腹減ってないでしょ？」
「雅紀くんはご飯食べたいでしょ？」
「んー...あ！イイコト思い付いた！」
「いいこと？」

なんだろう？
雅紀くんは自分の思い付きに満足してるらしく、ニコニコで私にヘルメットを被せる。
サングラスを掛けて、出発。

どこに行くのか訊いても教えてくれないし、何するのか訊いても教えてくれない。

暫く走ると、周りが賑やかな雰囲気になって来た。
観光客らしい人達も増えて来た。

バイクを停めて、少し歩いて辿り着いたのは中華街。

「食べ歩きなら欲しい分だけ食べられるからね！」
「そっかー、そうだね！」
「ナイスアイデアでしょ」
「うん！雅紀くん、天才じゃない？」
「やっぱり？そうかなー？とは思ってたけど、やっぱり？」

中華街の華やかな大門の前で、笑い合う。

「何から食べよっかなー」

スルっと繋がれた手に少し周りを気にして雅紀くんを見上げたら、彼は「そんな顔しないの」って片頬を膨らませた。