PARACAGE 6th【ars】 (ページ26)

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201.虫の声。←10.11 ページ26

帰りに飲みに連れてって昨日の話を聞いて貰いたかったのに。
こんな日に限って、アカリは休み。
私は仕方無く真っ直ぐ家に帰った。

焼き鳥の香りが、改札を出た瞬間に漂って来る。
時々駅前にやって来る焼き鳥屋さんの屋台が、今日は出てるって事だ。
ここの焼き鳥は、住人の彼らも大好物。

そこで焼き鳥を買ってテラハウスへ帰ると、リビングには智くんが居てニゴとゴロゴロしながらテレビを観てた。

「智くん、ただいま」
「おかえりぃ、Aちゃん」

ニゴが足元にすり寄って来たから「ニゴ、ただいま」って喉を撫でてやる。

「他のみんなはまだ？」
「うん。まだ帰って来てないよー」
「そっか...。ねぇ智くん、焼き鳥買って来たんだけど」

ゴロゴロしてた智くんがムクっと起き上がってこっちを見た。

「焼き鳥...Aちゃんの夜ご飯？」
「フフッ、たくさん買って来たよ！智くんも一緒に食べよ」
「やった！じゃあ、おれが買ってたビールをAちゃんにあげる！」
「やった！ちょっと着替えて来るから、待っててね！」

二階に上がって部屋着に着替えてまたリビングに戻ると、窓を開けた縁側に座ってた智くんが振り返った。

「Aちゃん、ここで食べよーよ」
「あー、いいね！」

智くんの傍らには缶ビール。
私は焼き鳥をパックのまんま持って行って、智くんの隣に腰掛けた。

隣がお寺で緑も多いからか、虫の声が聴こえて来る。
ちょっと肌寒いねって、智くんはパーカー、私は薄手のカーディガンを羽織って。
ついこの間まで温かった風は、もう冷たく変わった。

「秋だねぇ」
「秋だねー」

そんな事を言いながら、『秋限定』って缶に書いてあるビールで乾杯。
「皮が好き」「ネギマも良いよ」なんて串を見せ合ったりして焼き鳥を食べる。

「Aちゃん」

暫くのんびりと食事をした時。
智くんが、飲み終わったビールの缶をクシャっと潰してこっちを見た。

「相葉ちゃんとこにお泊りしたらしいね」

飲んでたビールをブフッ！っと吹き出してしまって、それを見た智くんがケラケラ笑って腕を伸ばしパーカーの袖で私の口元を拭ってくれる。

「あっ...！智くんの服、汚れちゃうから！」
「別に良いよ」
「でも...」
「気にしない気にしない」

ゴシゴシ拭かれる。
私、されるがまま。

「よし。綺麗になった」
「ありがとうございます...」
「ふふっ、何でそんな気まずそうな顔すんのぉ」

グシャグシャって、頭を撫でられる。