PARACAGE 6th【ars】 (ページ21)

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196.閉まる喉。ページ21

潤くんの目が、私の頭の上を見た。
そしてまた、視線は私に戻る。

「マジで何やってんの？」

鼻に掛かる、低い声。
いつもは心地良く感じる潤くんの声が、今朝はヒンヤリと感じる。

「...何も...」
「何？聞こえない」
「......何も...」

普段と同じように話してるつもりなのに声が全然出なくて、あからさまに潤くんの表情が苛立った。
その顔を見て余計に喉が開かない。

「潤ちゃん、そんな怖い顔しないでよ」

雅紀くんのその台詞は、全然フザけていなくて
むしろ、ほんの少し怒ってるようにも聴こえる。

「本当に何もしてないんだから、俺たち」
「この状況で、それを信じろって言うワケ？」
「この状況でも、それが事実なんだもん」

自分の首を掌でスルっと撫でた潤くんが「あぁ...もしかして」と呟いた。

「夜の海なんか行っちゃって、雰囲気に流された？」

ハッと笑い混じりで言われて、思わず「違うよ！」と反論。
さっきまで出なかった声が急に出て自分でもビックリする。

「ちゃんと喋れるなら、最初から喋れよ」

潤くんがスリッパを鳴らしながら廊下を進んで、私達の前を通り過ぎようとした。

「あのっ！...本当に、何も...無いから...」

私がそう声を掛けると、立ち止まったけど何も言ってはくれない。

「ねぇ、潤ちゃん」
「...何」
「俺が『何もやってない』ってのは信じらんないと思う。だって、今までの行いがアレだからね」
「だな」
「だけど、Aちゃんの言葉を信じてあげないのは可哀想だよ。...って、俺が言うのも変だけど」

その言葉に、潤くんは雅紀くんでは無く私を見た。

「うるっせぇな！朝っぱらから何なんだよ！」

突然、バーン！と黄色いドアが開いて寝癖で頭モジャモジャなニノくんが登場。

「人の部屋の前でボソボソボソボソ喋ってんじゃねぇぞ！喋るなら下行け、バカ！」
「あ...ごめん」

ニノくんの凄い剣幕に潤くんが謝る。

「オレはなぁ！？あと30分は寝れたんだかんな！？クソッ！」

不機嫌全開の彼が部屋から出て階段を下りて行く。
ドスドス音がしてる。

「A」
「...はい」
「とりあえず...今回は信じるわ」

潤くんはそれだけ言うと、階段を下りて行った。

頭の上に雅紀くんの掌が乗る。

「信じて貰えて良かったぁ...」
「......うん」
「まぁ信じて貰ったのはAちゃんで、俺は全然信用無いけどね！」

アハッと笑った彼は、ハァ...って小さな息も吐き出した。