PARACAGE 6th【ars】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,539,789 hit

178.長居は無用。ページ3

こんな針のむしろのような場所に長居は無用！
さっさと用事を済ませて、さっさと帰ろう！

「これ！ファイル！」

鞄からファイルを出そうとすると、潤くんが「腹減らない？」って訊いてきた。

「お腹...減ってる」
「じゃ、飯行かね？」
「え？潤くんと？」
「今から昼飯行こうと思ってたし」

そう言えば、12時だ。
ロビーにもお昼に行くっぽい社員さん達が続々と下りてくる。
どんどん人が増えるに伴って、当然だけど女性達からの視線も増える。

...あぁ！うちの会社のプリンスにこんな女が何の用だ！？的な目で見られてる！！
我が社のアイドルJUNに変な虫が！って思われてる！！
被害妄想だって？否！

「A？」
「だから、名前...っ！」
「名前が何だよ」

潤くん、ニヤニヤしてる。
この人はモテてる自覚があって、それを面白がってる系男子だ。
翔さんとは根元が違う、モテ男。

「飯、どーすんの？」
「あー...」
「お礼に奢るけど」
「行く」
「ゲンキンー」

アハハーと笑った潤くんの後ろをついて歩く。
それはもう、お付きの人ばりに低姿勢で。

会社を出ると周りの目もさほど気にならなくなって、やっと大きく息を吸えた。
無意識に息を止めてたらしい。

「何食いたいー？」
「んー、何だろ」
「蕎麦はAが昨日の夜食ったから無しだし」
「えっ！？何で私が昨日お蕎麦食べたの知ってるの！？」

昨日夜ご飯を一緒に食べたのは智くんと翔さんなのに！

「お前、俺が帰った時に蕎麦ならあるって言ったじゃん」
「...あ」
「自分も食べたからあるの知ってたんだろ？」
「潤くん、さては名探偵だね？」
「A、時々面倒臭いんだけど」

本当に面倒臭そうな顔して笑ってる。
申し訳ない。

「潤くんは何が食べたい？」
「蕎麦」
「じゃあ、お蕎麦にしよう！」
「アハハ！嘘だよ、定食屋にでも行く？」
「定食屋さん好き！」

私達は潤くんオススメの定食屋さんに行ってお互い、焼き魚定食と煮魚定食を頼んだ。

「本日の焼き魚は何ですか？」

私に運ばれて来た定食のお魚を覗き込みながら言うから「鯖のようです」と答える。

「煮魚は？」
「カレイです」

そんなやり取りをして、食べ始めた。
美味しい。

「潤くんって、オシャレカフェとかでランチ食べてるんだと思ってた」
「俺、家庭料理の味が一番好きなの」
「確かに潤くんが作るご飯もお母さんが作ってくれる感じだね」

お味噌汁を啜る。
これも美味しい。