PARACAGE 6th【ars】 (ページ2)

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177.おつかい。ページ2

最寄駅に着き、スマホで会社までの道程を調べてナビを起動。
スマホ画面と周りの建物を見比べながら歩く。

「...あっつー...」

もう夏も終わりだと言うのに、この暑さ。
日本どうしたの。
いや、むしろ地球どうしたの。

汗を拭きながら潤くんの会社に到着。超立派なビル。
何階建てだ...？なんてビルを見上げながらロビーに入ると、涼しくて力が抜けた。
天国か、ここは。

受付には綺麗な女の子が二人。

「すみません」
「はい」

素敵な笑顔。
完璧なメイクに、完璧なヘアスタイル。
今は制服だけど、きっと私服も完璧なはずだと思わせる雰囲気。

「松本さんをお願いしたいんですが...あ、何課なんだろう...」

しまったー...訊くの忘れた...。

「松本...でしょうか」
「はい。松本潤さんです」

あきらかに、受付さんの表情が変わった。
対応してくれてる子も、その横の子も。

「失礼致しますが、どちら様でしょうか」
「あ、寺坂Aと申します」
「寺坂様、アポはお取りでしょうか」
「アポ...っていうか、はい。約束してます」
「どのようなご用件で」
「...忘れ物を届けに...」

口元は笑ってるんだけど、目の奥が笑ってないお姉さんが内線の受話器を上げた。

「受付に寺坂様という方がいらしております。...はい、失礼致します」

受話器を置いたお姉さんが「すぐに松本が参りますので、少々お待ちくださいませ」と頭を下げる。

「ありがとうございます...」

ソローっと受け付けから離れたけど、お姉さんがこっちを見てるのは分かる。
あぁ...値踏みされてる。

忘れてたよ、潤くんが超絶美男子だった事！
そりゃ私がどこの課の松本さんなのか言わなくたって、フルネームさえ言えば潤くんが何課所属なのかなんてきっとこの会社の女子なら周知の事だよ！

しかも忘れ物を届けに来る間柄って、結構なアレだよ！...間違い無く、勘違いされてる...。

「A！」

ギャー！！名前で呼ぶなー！！
この状況での名前呼びは、ダメなやつー！！

走って来た潤くんに必死でブンブン首を振ると「は？」って顔。

「潤くん、ちょっと...」
「何？声小せぇよ」

ヒソヒソ話す私の口元に耳を寄せて来るもんだから、受付のお姉さん達はもちろんそこを歩いてた女子社員さんらしき人達にもめちゃくちゃ見られる。

まさか、この人も無自覚系？

「ちょ...近い...」
「えぇ？」

潤くんが面白そうにクスっと笑う。

...この人は、自覚アリだ。