PARACAGE 6th【ars】 (ページ18)

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193.夢オチ。ページ18

雅紀くんが私と一緒に居て緊張するだなんて、その言葉で私はその何百倍も緊張する。
手汗が凄いことになってそうで、とりあえあず自分の膝に掌をゴシゴシと滑らせる。

「あ、そうだ。これ、ギミスタの」

そう言って雅紀くんが指差したのは、床に敷いてあるラグ。
何年か前に入荷した時、スタッフの間でも可愛いって話題になった物だ。

「これ、身内でもかなり人気あったよ！」
「俺も一目惚れだった！」
「お買い上げありがとうございます」

ペコリと頭を下げると「Aちゃんに接客して貰いたかったなぁ」って言われて、何も言えない。

だって、このラグを売ってた時にはもう私は咲くんのファンだった。
そんな時に咲くんがお店に来たらそれだけでもパニックなのに、接客なんて絶対に出来ない！

...あの頃の私が、今の私を見たら何と言うだろう。

夢みたいな状況なのに、何であんまり浮かれてないの？

そんな風に言われる気がする。
浮かれてない訳じゃ無い。だって、本当に夢みたいなんだから。
だけどきっとまだ私自身が、この状況を信じられないんだ。現実だと思えてないんだ。
それこそ、寝て起きたらやっぱり夢でしたー！ってオチなんじゃないか？って。

「Aちゃん」
「ん？」
「何もしないって言ったけど...やっぱあれ、嘘」
「え...」

雅紀くんに肩を押され、ベッドに横たわった私の身体を彼が後ろから抱き締めた。
左腕は私の首の下、右腕はお腹の辺り。

海でも背中から抱き締められてたけど、この体勢でされるそれはまた全然違って全身が硬直してしまう。

「これだけ、許して...」
「...ん」
「今日はこのまま寝ても良い？」
「......うん」

...って、私これ寝られる！？
雅紀くんの色々を感じながら、寝ろって言われても無理な話じゃない？
無理無理無理、これはもう徹夜だ。
でも雅紀くんの腕の中に居られるなんて幸せ過ぎて、寝るのは勿体無いから徹夜どんと来い。
ほら、夢オチの可能性だってまだあるんだし。

「何か、ごめんね」
「え...何が？」
「無理やり、部屋に連れて来ちゃった気がして...」
「...ううん」

後頭部に、彼の鼻が当たる。

「一緒に居たいって...私も思ったから...」

自分の想いを口にしたら

「もっと、雅紀くんの傍に居たいって思ったから...」

急に、全部に現実味が帯びた。

そしたらここまで押さえられてた感情が一気に押し寄せて、それは涙になってボロボロ零れて

私は雅紀くんにバレないように、コソっと涙を拭く。