PARACAGE 6th【ars】 (ページ14)

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189.独り言。ページ14

ギュウ...っと雅紀くんに抱きすくめられる。

変わらず規則的な波の音。

「前にニノちゃんにも、こうされてたね」

雅紀くんが、私にだけ聴こえる声で言った。

「あ...あれは...」
「ニノちゃんの失恋を慰めてたんでしょ？聞いた」
「......」
「見た瞬間は、デキてんのかと思って焦っちゃった」

フフ、って小さな笑い声。

「でもね、そん時にAちゃんは俺のモンじゃなかったって気付いたの」
「...え...」
「しんどかった事だって話せて、慰めて貰って、甘えさせてくれて...そんなの俺だけだって思ってたからAちゃんは俺のモンだって勘違いしてた」
「......」
「だけど、違うじゃんって」

何か言いたいのに喉がギュっと詰まってしまって声が出ない。

「もしかしたら潤ちゃんとも深い話してんのかもしんないし、翔ちゃんを慰めたりもしてるかもしんない」
「...そんな...」
「そう言えばおーちゃんとAちゃんは一番一緒に居る時間が長いなぁ...とかね、そんな風に思ったら」
「......」
「何か、これはダメだなー...とか考えちゃって」

雅紀くんの声を、今までに無い程近くで聴く。
この距離じゃないと聴こえない位の声を、聴く。

「また逃げちゃって」
「......」
「もう、俺どうしようもないなーって」

喉でククっと笑った雅紀くんが、私の首に顔を押し付けるようにした。
瞬きを感じるから触れてるのは目元なんだな...とどこか冷静だったのは、あまりにも現実味のない状況だからなのか。

「だけど、今始まった事じゃないじゃん？俺がろくでもないのなんて」
「...そんなコト無いよ...」
「フフッ、ありがと。でも誰が見ても俺はロクデナシだよ」
「......」
「そんな事分かってんのに、何かずっとモヤモヤしてたの。何でこんなにモヤモヤすんだろ...って。けどそれ考えんのも面倒でさ」

雅紀くんの腕に力が入って、また少し身体が引き寄せられる。

「...スカート、似合ってた」
「え...？」
「ニノちゃんと、お揃いのやつ」
「...うん...」

どうして今、そんな話...？

「でも何か...嫌だった」
「......え」
「もしかしてモヤモヤの原因、これかな...って」

私の左頬に雅紀くんが掌を添えて

首に当たってた目元が離れたと思ったら

右頬に、彼の唇が触れた。

「俺、Aちゃんのコト好きなのかも」

雅紀くんが、私の頬に鼻をつけたまま独り言のように呟く。

「...好きなのかな...」

続けた言葉も、やっぱり独り言のようだった。