PARACAGE 5th【ars】 (ページ35)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:1,708,814 hit

175.傘。ページ35

ニノくんに押し切られた私は、仕事も無いのに何故か駅まで行く事に。
何か理由を付けなきゃ自分が納得出来ないから、コンビニでサンドイッチでも買って帰ろう。

「なぁ、A」
「ん？」
「何でお前を連れ出したと思う？」
「...さぁ...」
「話がしたくて」

ニノくんが持ってる傘で、地面をツーっとなぞった。

「傘...」
「夜に雨降るらしいから」
「.....」
「もう、あざとい計算も必要無いしね」

雨予報の日は、相合傘をする為にわざと傘を忘れるって言ってたニノくんが傘を持って行くという事。
それにどんな意味があるのか、考えると胸がシクシクする。

「相葉さんに、ちゃんと話したよ。多分、もう大丈夫」
「...あ、そっち...」
「そっち...って、それが一番大事だろ」
「何か...ありがと」
「当然の事をしたまで」

本当に雨降るのかなー？って雰囲気の空の下、2人で歩く。
結局2人でお風呂入ったのー？とか、リビング戻ったら潤くんにうるせぇって怒られたーとか。
そんな話をしながら。

「それと...」
「うん？」
「オレ、昨日すげぇ被害者ヅラしてたけど...そうじゃないなぁって…」
「え...」
「カノジョ、酷い女だって思ったでしょ？」
「...正直、そこは...うん...」

嘘をつくのもおかしいし、素直に頷く。

「でも、オレも酷い男だったんだわ」
「.....」
「カノジョはカノジョで、苦しんでた」
「...でも...」

彼女が苦しむのは、そんなの自業自得じゃないの？
私はニノくんの友達だから、ニノくんの味方をしてしまう。

「カノジョが薬飲んでた理由、ダンナと子供を作る為なのは本当だと思うんだけど」
「.....」
「オレに、負担をかけたくなかったのかもな…って」
「負担...」
「だって、オレとの間に子供できたらどうなる？オレ、慰謝料払わなきゃだしそんなの簡単に噂は広がるから仕事もヤバイよ」
「.....」
「あの人は...オレを守ってくれてたのかもしんない」

そんな...
私はどうしても「そうだね」って同意してあげられない。
黙り込んだ私を見て、ニノくんが笑う。

「納得してない顔」
「...そりゃ、ね」
「でもね、あの人は不倫にノリノリだった訳じゃないの。オレがこっちに引っ張りこんだ」
「.....」
「あの人は悪女じゃないの。信じられないかもだけど」
「.....」
「だって、オレが悪女なんて好きになると思う？」

片頬を上げて、ニノくんらしい意地悪な笑顔。

「...思わない」

私が言うと、彼は笑い混じりに「だろ？」と呟いた。