PARACAGE 5th【ars】 (ページ28)

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168.大きく息を。ページ28

「でもアカリ、さっき全然そんな感じ出してなかったのに」
「あったりまえでしょ！友達の好きな人に妙な態度なんかとってアイツの連れって変な奴とか思われたら、Aの印象まで悪くなるかもしんないのに！」
「アカリ、そんな事まで考えてくれてたの！？」
「必死でニヤけそうな顔を引き締めて、必死で砕けそうな腰を奮い立たせてたわ！」

フンっと鼻息荒く言うアカリに抱き着きたい勢いだけど街中でそれは出来ないから、握手してみた。
「は？」って変な顔された。

「それにしても、咲くんって本当にイメージと違うかも」
「あ、思った？」
「全然クールな感じ無いね。何より、声が凄くキュート」
「そうなの！声、可愛いよね！でもハスキーなんだよ！」
「益々ファンになっちゃうねー、困っちゃうねー」
「ねー、参っちゃうねー」

ケラケラ笑いながら、私達はギミスタへ入った。

・

仕事を終えてテラハウスに帰ると、智くんと翔さんが二人でお蕎麦を啜ってたから私も一緒に食べた。
食後は智くんの絵本を翔さんがチビッコにするように私達に読み聞かせするっていう、シュールな遊びをして大笑い。翔さん、保育士さんにもなれるよ。

その後は翌日休みの私だけがリビングに残って、翔さんは就寝。智くんは、新作の敲き台を作るとかで部屋に籠った。

何となくテレビをつけたけど、特に観たい物も無い。
潤くんに何かブルーレイ借りておけば良かった...。

ふと気が付くと、ゴロンとソファに寝そべり少し寝てたらしく壁の時計の長針は一周半してた。

「...部屋行こ」

ムクっと起き上がると、玄関が開いた音がした。
誰だろう。

ダイニングのドアが開くのを、リビングから待つ。
数秒後、そのドアを開けたのはニノくんだった。

昼間に見たあのスーツを、ちゃんと上下で着てる。

「おかえり、ニノくん」

彼は何も言わず、ジャケットを脱いでダイニングの椅子に引っ掛けた。

「今日は偶然だったね」
「......」
「ビックリしたよー」
「......」

私が何を行っても応えない。
でも、無視をしてるとは言えない。

だってニノくんはずっと私の目を見て、どんどん近付いて来てるから。

「ニノくん...？」

ソファに座りニノくんを見上げてる私の前に立ち、彼は目を閉じ口から大きくスゥーっと息を吸い込む。

そして、息を吐き出し目を開くと

彼は、私をソファに押し倒した。

肘置きに軽く頭をぶつけた私に、彼は耳元で小さく「ごめん..」と零す。