PARACAGE 5th【ars】 (ページ3)

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143.アイスキャンディー。ページ3

色々と考えてしまってダイニングでボーっとしてると、タオルを首から下げた雅紀くんが戻って来た。

「あれ、リュックは...」
「ニノくんが持って上がってたよ」
「やっぱニノちゃん、優しいね！」

キッチンへ行った彼は、さっき私達がソーダに入れてたアイスキャンディーを咥えて出て来たと思ったら目の前に座る。

「もう夏だねー」
「梅雨は明けた？」
「まだじゃなかったっけ？お天気お姉さんからは何も聞いてないな」
「...雅紀くん、お天気お姉さんともお友達なの？」
「え？アハッ！違うよ！ニュースの話！」
「あっ...あぁ！そっか！」

もう雅紀くんの口から女の子の話が出ると、全部そーゆー関係なのかと思ってしまう。
まぁ、もしかするとそーゆー関係なのを誤魔化してるだけかもしれないけど...嘘が下手だって知ったしこれは信じておこう。

「そろそろバーベキューかなー」
「バーベキュー？」
「うん。毎年何回かすんの、庭で」
「楽しそう！」
「楽しいよ！潤ちゃんの作る焼きそばが絶品！」

想像するだけでヨダレ垂れそう。

「かき氷とかイベント好きなんだね、皆って」
「さすがに男ばっかでハロウィンとかはやんないけどね」
「それはそれで、見てみたい！」
「えー？そしたらAちゃんも仮装しなきゃだよ？何してくれる？」
「何が良いかな？」
「看護婦さんかぁ、セーラー服かぁ、ミニスカポリス」
「それって、仮装じゃなくってコスプレだよね？」

私が言うと、雅紀くんはタハハと笑ってアイスを齧った。

「...雅紀くん」
「ん？」
「......ううん、何でも無い！」

訊きたい事は、たくさんある。
だけど上手く言葉にできなかった。

「アイス、食べる？」

雅紀くんが齧ってたアイスを私の口元まで持って来る。

「欲しいのかな？と思って」
「あ...ううん、私もさっき食べたから大丈夫！」
「そっか」

アイスはまた、彼の口の中へ戻って行く。

テレビもつけてない部屋。エアコンの機械音がやけに大きく響く中で、雅紀くんの齧ったアイスがシャリシャリと音を立てる。

「私、もう寝るね」
「うん、おやすみ」

私が立ちあがると、雅紀くんはニコっと笑って手を振った。

その手で、どんな風に女の子に触れたの？
その手で、どんな風に女の子を鳴かせたの？
その手で、どんな風に女の子を抱き締めたの？

嫉妬ほど、惨めな物は無い。

「おやすみ、雅紀くん。また明日」

私は同居人だから言える挨拶を、声に出した。
これは私だけの特権だ。