PARACAGE 5th【ars】 (ページ15)

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155.指先。ページ15

ジンジン脈打ってる指先に水が流れる。

「怪我したら母ちゃんが舐めてくれてたから、つい」
「それ、いつの話？」
「幼稚園くらいかなぁ」
「フフッ、私もう大人だよ？」
「でも、おれAちゃんの絆創膏になってあげたいなーって思ってるよ？」
「...え？」

キュッと音を立てて、蛇口が閉められた。
血はまだ止まってなくて、指先がジンワリと赤く染まる。

「どうしよ、止まらないね」
「...あ！マキロンあったよね！前に翔さんが指切った時に使ってた」
「そうだ！あったねぇ、翔くんがね...ふふっ」

翔さんが指を切った時の事を思い出したのか、智くんがクスクス笑った。
確かにあの時の翔さんはちょっと面白かった。
男の人は血を見慣れてないって言うけど、本当にそうなんだなって思っちゃう大騒ぎで。
「こんなに出血しても平気なの！？僕、貧血ならない！？」なんて半泣きで言ってて。
いつもの穏やか朗らかな翔さんとは全然違う姿に、申し訳ないけどそこに居たみんなが笑ってしまった。

「A、野菜まだ？」

2人でクスクスしてると、潤くんがキッチンに顔を出した。

「あ、ごめんなさい！切れたのもあるんだけど…」
「Aちゃん、野菜以外も切っちゃったの」

智くんの言葉に、潤くんが「は？」って私の手元を見る。

「うっわ、お前！何切ってんだよ！」
「何...って、指を切っちゃいました」
「誰が指を切れっつったよ！」
「わざとじゃないぃごめんなさいぃ」

怒られた気分になって許しを乞うように謝ると「別に怒ってないだろ！」って怒られた。
何だよー、怖いよー。

「潤くん、手当てよろしくね」
「え？」
「おれ、応急処置だけしといたから」
「応急処置？」

智くん、ビールを冷蔵庫から出してふわふわーっと庭の方へ戻って行く。

「...ったく。ちょっと待ってろ」

潤くんに腕を掴まれて、私の左手はまた心臓より上に引き上げられた。
そのままの体勢で待ってると、すぐに潤くんが戻って来てその手には救急箱。

挙げてた手首をまた掴まれて、マキロンを指先にシュッと掛けられる。
軽く沁みて「うっ」って言うと「大袈裟」って言われてた。厳しい。

傷口にペタッと絆創膏を貼られて、さっきの智くんの言葉を思い出す。

「Aでも野菜くらいなら切れると思ったんだけど」
「切れるんだよ！切れるんだけど、考え事しちゃってねー…」
「お前は花嫁修業の必要があるな」

潤くんがアハッて笑った。