PARACAGE 5th【ars】 (ページ2)

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142.重い荷物。ページ2

「だって、酔ってたのにお前とヤんなかった理由を『女だと思ってないから』とか言われたら、A悲惨じゃん」
「...うわ」
「だから良かったねーって」
「言われてたら立ち直れなかったよ！何でそんな危険な話をしたの！」

そう言えばそうだよ！
ニノくんってば、何でこんな話を私の前で！
意地悪すぎる！

「傷は浅い方が良いじゃん」

抗議してやろうと彼を睨むと、ニノくんはフっと笑って言った。

「実りの無い恋愛なんだったら、早めにそれを知る方が良いと思ったから」
「......」
「深みに嵌ってからじゃ遅いもん。だから優しいニノくんが今の内に訊いてあげたの」
「......」
「でも、実りが無いワケじゃ無さそうだね」

ニノくんが女の子みたいに両肩をキュっと上げる。

実りの無い恋の深みに嵌る...
鳶色の透明な目が私の視線から逃げるように、遠くを見た。

「だけどアイツのクズな部分もいっぱい聞いちゃったね！」
「...ねぇ、ニノくん」
「それでも好きって言えるんなら、Aの想いは本物だわ」
「ねぇ」
「オレ、そろそろ寝よっかな」

立ち上がったニノくんの手首を掴むと、ハァ...って小さな溜息と共に「なぁに？」って呟く。

「ニノくんの恋は、実りがあるの...？」
「無いよ」
「それでも良いの...？」
「言ったでしょ？気が楽なの。重くなくて、縛られなくて」
「......」
「オレ、愛人体質なんだって。昔、言われた事あるしね」

そんな体質の人が、本当に居るのだろうか。
誰だってその人の中の一番になりたいって望む物じゃないの？

「ニノくんは、それで良いんだね」
「気に入ってるよ」
「じゃあ、前に話してくれた『知り合い』の人はどう思ってるかな」

ニノくんは少し考えてから、あぁ...とちょっと微笑んで「知り合い、ね」って頷いた。

「知り合いは...カノジョを独り占めしたいのかもね」

彼は、女の子みたいな顔で、男にしか見えない表情を見せる。

手首を掴んでた私の手を離し、向かいの席に置いてある雅紀くんのリュックを持って「おやすみ」ってダイニングを出て行く。
やっぱり持って行ってあげるんだ。

「優しいくせに...」

すぐに捻くれた事を言う。

「...寂しいくせに」

すぐに平気そうな顔をする。

ニノくんの細い背中には物凄く重い荷物が担がれてるのかもしれないって思ったら、何だか苦しくなった。
だけど、その荷物をきっと彼は下ろせないんだ。

私が抱えてしまった雅紀くんへの想いを手放せないのと一緒だ。