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「名前さんはわかりやすいから」
「...そうかな」
「他の人には分からなくても、俺は知ってます」
彼女は非常に不安定だと、八木は思う。
普段の彼女といえば、みなに聞けば口を揃え「明るい」と答えるような、快活なお人好しだ。
しかし、それはあくまで仮面である。
仮面の下はといえば真反対で、普段の明るさとは程遠い、暗く、それでいて幼く、そして極度の寂しがり屋であった。
一人でも大丈夫と思わせるような性格の反面、この人は誰かに依存しなければ生きてけない。
矛盾を多く抱えていて、それにいつも頭を悩ませている。
だがそれも、普段は完璧というほどにそれを仮面で隠し通している。
幻想を壊さないように、悟られないように。
しかし、無理をし続ければ駄目になるのは常。どう頑張れど剥がれる落ちる時が来てしまうのだ。
それは不安定で危うくて、目を離せば死んでしまうのではないかと、八木は初めて自分の前で彼女が崩れた時に思った。
それ以来、彼は定期的に夜中に彼女の家に訪れるようになった。
「優樹だけだよ、こんな私を助けてくれるのは」
そう言われた、あの時から。
「優樹、ゆうき」
「なんですか、名前さん」
「...」
「そうですね。もう寝ましょ、一緒に!」
「...うん」
名前の言いたいことを汲み取った八木は、ソファから寝室へと移動し、彼女と一緒にベッドに潜った。
向かい合いながら横になり、キュッと、彼の手を握って彼女は目を瞑る。
赤子が出された親の指を反射的に掴むように、彼女は八木と手を繋ぎながら眠りにつく。
時々彼女が存在を確かめる様に強く握るので、彼も返事をする様に握り返した。
その寝顔はとてもあどけなくて、八木はそんな彼女を愛おしそうに繋いでない方の手でゆっくりと頬を撫でた。
「...俺だけにしてください、ね」
そっと囁いて、彼はもう一度手に力を込めてから目を閉じた。
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ミナ - お返事ありがとうございます!此方こそいきなりスミマセンでしたm(__)mはい!全然急ぎでは無いので大丈夫ですよ(*^_^*)いつも楽しく見させて頂き有難うございます! (2016年9月15日 17時) (レス) id: 2806de172c (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、再びのコメントありがとうございます!了解いたしました。またお時間を頂きますがお待ちいただければと思います!ご期待に添えるよう尽くしますのこれからもよろしくお願い致します。 (2016年9月15日 15時) (レス) id: 36ed8eb340 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 遅くにスミマセン(泣)今また見ててこの先が凄く気になりリクしたくなりました!このお話の続きを書いて頂けないでしょうか?どちらと結ばれるかは牡丹さまにお任せします!全く急ぎでは無いのでお願いできますか?修羅場等入ってたら嬉しいです! (2016年9月15日 2時) (レス) id: 8be0271ad6 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - 咲龍さん» 咲龍さん、コメントありがとうございます。一気に読んで貰えてとても嬉しいです。リクエスト承りました!順次消化させていただきますので、気長にお待ちいただければと思います!よろしくお願い致します。 (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、お久しぶりです。遅くなりましたが、喜んでいただけたようで一安心です!書いてて、ツイン組の取り合いは高度だなと思いました笑。なんというか、計算高いイメージです。こちらも書くのが楽しかったです!リクエストありがとうございました! (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:篠崎 牡丹 | 作成日時:2016年8月25日 23時