2 ページ6
その矢先、八木が動いた。
やけに、その動作がゆっくりに見える。
彼女の耳元に顔を寄せて、手で耳を覆う。
所謂耳打ち、内緒話、ひそひそ話。
落ち着いたと思ったのが一気に霧散して、口元がひくつく。
それにさらに追い打ちをかけるみたいに、彼女は顔を赤くしていた。
それを見た瞬間、何かが切れた。
周りがどんな顔をしていたかなんて覚えていない。
ほとんど無意識で動いていて、気づいた時には名前の腕を引っ張って外に出ていた。
相当な力で掴んでいたせいか少し赤くなっていたが、そんなことを気にしていられる余裕すらなく、彼女を壁に押し付けた。
「よし...か、つ?」
「黙って」
「え、ちょっとあ、んぅ!?」
突然のことでよくわかってないらしい彼女は怯えているよう見えた。
だが、それもお構いなしにキスをした。
無理やり舌を入れ口内を蹂躙すれば段々と立っていられなくなるのか、肩に名前の手が掛かる。
逃げる舌を捕まえていれば、酸素を求めて声を上げようとする。
少しして口を離すと、トロンと顔を赤くして涙を目にためた名前がこちらをみていた。
自分だけがこの顔を見ていられるという感覚が、ゾクゾクと背を這う。
それと同時に自分のどうしようもなさを痛感した。
やっちまった...と心の中で後悔する。
あまりの情けなさに壁についていた手で目元を押さえた。
「義勝...?」
「...その、マジでゴメン」
「...怒ってた、よね」
「...うん」
「私何かしちゃった...?」
少し泣きそうになりながらそう聞く名前に不覚にも可愛いと思ってしまう。
でも、あれは駄目だ。
あんな風に話す相手は俺だけでいい。
独占欲の塊だなと自分で自分を鼻で笑い、ゆっくりと名前を抱きしめた。
「義勝、ここ外だよ...!」と焦る名前。
でも、外だろうが気にしない。たった今開き直った。
こうでもしないと俺のだってわかんないだろ?
本人でさえ自覚してないんだから。
76人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミナ - お返事ありがとうございます!此方こそいきなりスミマセンでしたm(__)mはい!全然急ぎでは無いので大丈夫ですよ(*^_^*)いつも楽しく見させて頂き有難うございます! (2016年9月15日 17時) (レス) id: 2806de172c (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、再びのコメントありがとうございます!了解いたしました。またお時間を頂きますがお待ちいただければと思います!ご期待に添えるよう尽くしますのこれからもよろしくお願い致します。 (2016年9月15日 15時) (レス) id: 36ed8eb340 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 遅くにスミマセン(泣)今また見ててこの先が凄く気になりリクしたくなりました!このお話の続きを書いて頂けないでしょうか?どちらと結ばれるかは牡丹さまにお任せします!全く急ぎでは無いのでお願いできますか?修羅場等入ってたら嬉しいです! (2016年9月15日 2時) (レス) id: 8be0271ad6 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - 咲龍さん» 咲龍さん、コメントありがとうございます。一気に読んで貰えてとても嬉しいです。リクエスト承りました!順次消化させていただきますので、気長にお待ちいただければと思います!よろしくお願い致します。 (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、お久しぶりです。遅くなりましたが、喜んでいただけたようで一安心です!書いてて、ツイン組の取り合いは高度だなと思いました笑。なんというか、計算高いイメージです。こちらも書くのが楽しかったです!リクエストありがとうございました! (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:篠崎 牡丹 | 作成日時:2016年8月25日 23時