検索窓
今日:11 hit、昨日:22 hit、合計:50,182 hit

3 ページ3

その時だった。
突然扉をバンバンと叩かれて、すぐさま後ろを向く。
振り向いた時にはもう扉は開いていて、黒い何かが私を覆い尽くしていた。
その瞬間、よく知った、その人特有の香りが私の思考を埋め尽くしていく。
走ってきたのか、肩を上下させ息を切らしていて。
じわじわ体温が流れてきて、背中に回された腕から圧力がかかってきた。
確かめるように、優しくもしっかりと引き寄せられる。
そこでやっと、自分は彼に...友将に抱きしめられているんだと理解した。


「...とも、まさ」

「......悪い、我慢出来なかった」

「なんで...」

「好きな奴が助けてって泣いてるって思ったら、居ても立っても居られなくって」

「...え、?」

「...ずりぃよな。今言うの」


"でも、今しかないって思って"
耳元で、小さくそういった彼の言葉は、しっかり耳に届いて。
顔から火が出そうなくらいあつくなって、また泣きそうになって。
よく分からない感情でいっぱいになった。
別れたって言ったら、好きって言われて。
失恋後の春なんだろうか、なんて一瞬暢気になって思って。
複雑さが混ざりに混ざり合って、何も言えなくなる。
でも、その複雑さの中で確かに嬉しいと思っている自分もいた。

続けて彼は言う。


「俺ならなれる。てか、なる」

「...なにに?」

「名前の運命の人」


真剣な声色に、何かが落ちる音がした。


「...期待、してるね」


私はその日、初めて心から笑った。









fin

作者から→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミナ - お返事ありがとうございます!此方こそいきなりスミマセンでしたm(__)mはい!全然急ぎでは無いので大丈夫ですよ(*^_^*)いつも楽しく見させて頂き有難うございます! (2016年9月15日 17時) (レス) id: 2806de172c (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、再びのコメントありがとうございます!了解いたしました。またお時間を頂きますがお待ちいただければと思います!ご期待に添えるよう尽くしますのこれからもよろしくお願い致します。 (2016年9月15日 15時) (レス) id: 36ed8eb340 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 遅くにスミマセン(泣)今また見ててこの先が凄く気になりリクしたくなりました!このお話の続きを書いて頂けないでしょうか?どちらと結ばれるかは牡丹さまにお任せします!全く急ぎでは無いのでお願いできますか?修羅場等入ってたら嬉しいです! (2016年9月15日 2時) (レス) id: 8be0271ad6 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - 咲龍さん» 咲龍さん、コメントありがとうございます。一気に読んで貰えてとても嬉しいです。リクエスト承りました!順次消化させていただきますので、気長にお待ちいただければと思います!よろしくお願い致します。 (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)
篠崎 牡丹(プロフ) - ミナさん» ミナさん、お久しぶりです。遅くなりましたが、喜んでいただけたようで一安心です!書いてて、ツイン組の取り合いは高度だなと思いました笑。なんというか、計算高いイメージです。こちらも書くのが楽しかったです!リクエストありがとうございました! (2016年9月14日 11時) (レス) id: 3c506cdcd8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:篠崎 牡丹 | 作成日時:2016年8月25日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。