Prince of Vampire (ページ22)

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「あのさぁ、」

帰りの車中、顕嵐に言われる。

「Aは彼氏作らないの？」

「え、？」

唐突だった。

「今日平野に地元の川に行こうって言われた時、断ってたじゃん。」

「うん…？」

「水辺が苦手でって。」

全部聞かれてた。

その時の会話。
私自身覚えてる。

………

「今度Aちゃんも一緒に行こ？」

「あ、ごめん、水辺は苦手で…。」

「えっ、そうなん？もったいない。」

………

「でも、俺が最初に車でどっか連れてくよって言った時、Aは言いかけたよね。

海に行きたいって。」

「…。」

覚えてくれてたんだ。

「水辺苦手って嘘ついたの、

平野の誘いを断るつもりだったんじゃない？」

「うん…。」

「でも、A的には平野のこと、普通の友だちとしては気に入ってる。じゃなきゃ一緒に学食で連んだりしないよね。」

…たしかに。

「でも二人きりで遠くに出掛けるのまでは抵抗ある、
てことは、特定の彼氏とか、男とすっごい近くなるの、ほんとは嫌？」

きっと心配してくれてるんだろう、友だちとして。

顕嵐の言葉が、心に響く。

「A？」

答えないでいるから、
顔を覗き込まれる。

その目を見れない。

なんでだろう。

すごく、ドキドキする。

このドキドキ感。

感じたのは初めてじゃないけど、

今までも、全部顕嵐に感じてた。

それに、無意識な言動に人は嘘をつけない。

私は顕嵐には海に連れて行って欲しいと望み、他の男の子の誘いには、無意識に嘘をついて断った。

男の子が苦手だからじゃない、
きっと他に好きな人がいるから、無意識に断ったんだ。

私、たぶん

いやきっと

…顕嵐が好き。