失楽のウンディーネ 6【イナイレ】

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『オンディーヌ、この先は行っては行けないよ』


『どうして？』


『底が深いからさ、君の小さな体だとすぐに溺れてしまうよ。


君にはまだこの先は早すぎる』


だからダメだ、いいね？


片方の手を誰かが掴んでいた。


『わかった』


『いい子だ』


『ねえ博士、楽しい？』


『ああ、楽しいとも』


『私のお守りをしてるだけなのに？』


『お守りだなんてとんでもない、エスコートしているのさ』


『エスコート？』


『そうだ、たかが子供1人の為にこんなことするはずないだろう』


軽く笑いとばす口調で彼は1m先に進んでいく。


手は掴んだままだった。


『？？』


『？オンディーヌ？？』


引きずり込まれるように海へと沈んでいく体にその人はこちらを見ているはずなのに気付いていないようだ。


映像と同調するかのように息苦しくなった。


目を開くと、痛覚と引き換えに美しい水面と大きなそれが姿を現す。


それ、は、少し暗くて分からなかった。


もう一度痛みに耐えながら目を開くと、そこには鯨がいた。


白い。


大きさからして子供の鯨のようだ。


それはかろうじて、私に聞こえる音で鳴いた。


なんだか楽しそうだ、人間の耳には低すぎるその音で、私に話しかけている、歌っている様にも思える。


私は、いつの間にか消えたあの人の掴んだ腕を気にせずに腕を伸ばして、海の中でこう言った。


「おいで、52(Fifty-two)」

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