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「不動、私を抱えてこのまま路地裏を突っ切れるか？」
彼女はさっきまで可愛げのある笑みを直様消して俺を見る、それがどうも年不相応で、理由は分からないのだが、何だか悲しくなった。
そんな心情をおくびにも出さず、応答した。
「お前軽いから大丈夫だろ、どのくらいだ？」
「そうだな、私が合図したらここからあの曲がり角を10秒で走って欲しい、そのまま路地裏から私を置いて出てくれ」
10秒か、……頑張ろう。
「分かっ…………待て、それじゃあお前は」
「いい、大丈夫」
「大丈夫じゃねェだろ！？」
そう言いつつも彼女を逆向きに抱えた、ああ、俺って優しい奴。
「絶対守るから」
「チッ、……お前のそういうトコ、嫌いだよ」
「あはは、君のそういう優しいとこ、私は大好きなんだがね」
「……」
普通なら。
いや、人によって普通ってのはやっぱり価値観が違うからあまりにこういうのは言わない方がいいのだろうが。
多分普通なら、俺が守る方だってのにな、情けねぇ。
彼女の異常とも言える強さが、何か側面の様なものを意図的に隠そうとしているのは、何となく分かる、何かは分からないのだ。
分からないことが分かっているのに、なぜ分からないのかはやっぱり分からない。
「ほら、気を引き締めろ」
不本意ながら、彼女の細い脚を力一杯抱える、大丈夫だ、大丈夫、きっと、なるようになる。
「へいへい」
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作者名：久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時：2020年9月17日 21時
