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驚いた、よりも失望感の方が実際には多い。
父親？有栖川鏡が？
前支部長を殺した？
「……確かに彼が私の母を殺したと仮定して、まあ現場には来るだろうが……。
可笑しく、ないか、前支部長は多分強いぞ？」
「ああ、強かったとも。
だがそれ以上に君という最高傑作を手放したくなかったのだろうよ」
「…………済まない、未だ。
未だ、整理しきれない」
彼は無理もないだろうと笑った、その背後に影山が関与してくる様な可能性は？彼は本当に無関係なのか？
そもそも、前支部長の時から居たアランとジャックは？私の記憶に関してを知っているんじゃないのか？
全てにおいて疑心暗鬼になっている私に声をかけたのはやっぱり目の前の彼だった。
「……さて、約束は話した。
有栖川女史、君はそのピアスを持っているといい、いつか役に立つだろうからね」
「…………ああ、」
頭の中を整理しきれない、きっとこの激情は生前ものなのだ、きっと私は彼のことを大切に思っていたのだろう。
モニターからは試合終了のホイッスルが鳴り、鬼道が叫んだ。
佐久間をあんな目に遭わせて満足か、と。
極悪非道と彼らに称された程なのだ、目の前の彼は、だが私は彼の言葉を信じる他なかった、今となっては信用できる人も居ないのだから。
アランやジャックはきっと生前の私のことを知っている、そりゃそうだ、こんな年端のいかない少女にこんな凄惨なことを伝えて何が楽しいか。
私は私で記憶を見つけよう、全てにおいて不信感が募る中、影山は鬼道に自身の最高傑作だと、そして私は何としても手に入れたい作品だと言った。
「……影山」
「何だね」
「……ありがとう、ロバートのことと、それから……」
「いい、元々そうする心算だった」
「……じっくり考えてみるよ、己のこと、支部のこと、ロバートのこと、勿論君のこともね」
テーブルに置いた銃を持ってその部屋を立ち去る、どうやら潜水艦と睨んだのは間違いない様で、彼はそのまま逃亡する心算だろう。
ルートとしては海外か……？
「……フ、ああ、考えてみるといい」
背後でそう聞こえた気がした、一部崩れていく潜水艦から私は海の中へと身を投じる、そのまま海岸へとゆっくり進んで行った。
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作者名：久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時：2020年9月17日 21時
