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「あ、そうだアンタ」
「……」
「おいおい無視か？
コーヒー馬鹿みたいに買ってたアンタだよ」
「……不動、」
きちんと覚えていたぞ、と言うと嬉しい限りでとぶっきらぼうに返した。
彼は私に握手を求めたのか、手を出したので、私も手を出すと彼は私の手首を握って勢いよく引っ張ると、
「翠ッ！！」
「……！？」
吐息と共に耳元で囁いた。
「会うのを楽しみにしてたぜ。
支部長サン?」
「ッ……はァ、心臓に悪い……」
咄嗟に耳元を片手で抑える、ほぼ癖でホルスターの元に手を添えた。
「ハハッどうよ？
行きたくなったか？」
「真昼間だぞ、倫理観、お前もイカれてるんじゃないか？」
1回死んどけ、と言うと悪ぃ悪ぃ、と悪びれもなく笑った。
「翠、アイツと知り合いか？」
鬼道が後ろから聞いてきたので、1度京都で会ったんだ、と正直に言うと、不動は急に真面目な顔になって、
「ウチの総帥がアンタに会いたがってる」
「貴様、翠まで連れていく心算か……！？」
「おいおい、そうカッカすんなって。
多分、悪い様にはしねェよ、ロバートの子がどうのって言ってたし」
「ロバー、ト、」
カチリ、と何か音がして、片耳を塞いだ。
「ッ……！」
果てしなく聞こえる発砲音が脳内で何回も何回も再生され、右足首の銃創がとても痛い。
「翠！？」
「おいおい大丈夫か……？
うわ、相変わらず酷ェ顔」
「貴様……ッ！」
「鬼道、いい」
「は、」
「いいんだ、大丈夫」
「……」
彼が私の都合の悪い様に言わなかったことは分かっていた、彼は私が支部長であると突き止めてなお有栖川Aの名前を呼ばなかったのだ。
それにこれは多分私の記憶の問題なのだ。
聞き覚えのある筈のロバートという人がどうも思い出せないでいた。
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作者名：久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時：2020年9月17日 21時
