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春、慰めと哀願・壱 ページ34

あれからことは順当に進んだ。任務に関わっていない分不明瞭だが、聞くところによるとやはり天内理子は死んだらしい。


微かな安心を塗り潰す脱力感と罪悪感が、しばらく私を蝕んだ。それが完全に消えることは、きっとこの先ないだろう。……覚悟の上だが、やはり気分は悪い。


そして、季節はすぎて行く。ここへ来てもう三度目の春だ。


「や、傑」
「ああ、A。今日はよろしく」


今日は傑との合同任務。燕は来ていない。


燕は去年の冬頃から、どこへでも私に着いていくスタイルをやめたらしい。なんでも「思ってた以上に手がかからなかったので」とのこと。


彼も準一級なので呪術師としての仕事があるし、私としてもあまりにも彼が私の世話に付きっきりで心配になっていたのでほっとした。


「……着物、辞めたのかい」


私の黒いワンピースを見て、傑がぽつりと呟いた。私はちょっと笑って頷いた。


私は着物を着なくなった。髪もそのうち切るだろう。着物より洋服が好きだし、ロングヘアよりショートヘアが好きだ。


私と傑は補助監督に促されて、車の後部座席に並んで座った。


エンジンがかかる。景色が窓の中で横に滑って行く。


「折角家から出たのに、家に言われた通りのことをするのは癪だしね。まあ単に好きな格好したいだけなんだけどさ」
「じゃあ髪も切っちゃうのか」


私がここに来た時に、服も髪型も実家の趣味だと言っていたことを覚えていたらしい。傑はさらりと私の髪をひと房掬って、名残惜しげにぱらぱらと離した。


「綺麗な髪だったのに」
「まあでも、忙しいのが落ち着いてからになるし、切るとしても夏の終わりくらいかなあ」
「じゃあそれまでにたくさん触っておこう」


そんなことを言って傑は私の髪を三つ編みにしはじめる。好きにさせてやろう。

ゝ・弐→←ゝ・参



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ニノ崎(プロフ) - めっちゃ面白いです,,,好みドストライクです!これからも応援しております。後,伍話目の美美美ー美・美ー美美ってまさか某マルハーゲ帝国()のパロですか() (2021年3月2日 18時) (レス) id: 159ece0998 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - みもなるーと。さん» 丁寧なご感想たいへん嬉しいです、ありがとうございます!燕は扇一の自立に必要な犠牲だったのでちょっと……ね……これから扇一夢主、ガンガン男前に磨きがかかって参りますので何卒お楽しみ頂ければ幸いです! (2021年2月26日 19時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - なんだかクソデカ感情を向けてしまった(?)夢主に恋してしまうかと思ってしまいましたね… 最近は天候が崩れやすいのでお体に気をつけて無理せず頑張ったくださいチュチュ… (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - な、なんだこの小説は今まで生きてきた私へのご褒美かご褒美なのか。夢主のどこか達観した想像力などに惹かれました。燕さん私の推しだったのに食べちゃいましたね…やはり愛とは、呪いなのかしらと再認識できた気がします。素晴らしい小説をありがとうございます。 (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 43yomi1さん» ありがとうございます〜〜!!!更新頑張ります!! (2021年2月26日 16時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱるさん | 作者ホームページ:なしv  
作成日時:2021年2月25日 0時

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