呪霊食べる系幼女に転生しちまったんだが【呪術廻戦】

ゝ･弐 ページ35

私の髪を梳く傑の指。その長い指の感触に目を閉じて、私はひとりごとを言うみたいに呟いた。


「傑さあ」
「うん？」
「辛いとき、無理するのは良くないよ」


傑の手が一瞬止まった。


「……なんの、ことかな」
「嘘が下手だな。君ね、呪霊取り込んでる時といい今といい顔に出るんだよね」


半分嘘だ。確かに顔に出ちゃいるが、微かに眉が動くとか顔が微妙に引き攣るとかその程度である。私は原作知識があるので、「多分参ってる頃だろうな〜」というのが分かるのだ。


傑はぱちぱちと目を瞬かせると、暫く視線をさまよわせて、やがて諦めたようにふう、と息を吐いた。


「随分、鋭いんだね。誰にも気づかれたことは無かったのに」
「こないだ君の術式を拝借して呪霊を食べたら酷い味がした。そりゃ顔顰めたくもなるわと思った」
「チャレンジャーだな君、不味いって分かってたんだろ」


いや興味本位で……なんだっけ、吐瀉物を拭いた雑巾を丸呑みしてるような味だっけ？言い得て妙だよな。


私は生ゴミとヘドロを煮詰めたものを食らっている気分だったよ。


嫌さ加減は変わらないな。


「というわけで目の前でそれをされると私も心が痛いので、今日は呪霊食べないでね。私が食べる」
「美味しいやつだといいね」
「大抵の呪力は美味しいよ」


……あ？話逸らされてるな。


私が純然たる幼女であればこのまま流されただろうが、残念なことに中身はもう20代もいいとこである。


「天内理子さんだったっけ」
「……」
「君は私より大人だから、素直に泣いたり辛いって言えなかったりするんだろうね」


だが、子供の皮を被ることは出来る。


子供とは、総じて素直だ。時に残酷までの素直さを持つのが、子供だ。


聞くべきでないと思うしそっとしておいて欲しいだろうと思う。けれど少し踏み込まれないと、素直になれない人もいる。


傑は多分、そのタイプだ。これは私のエゴだけど、弱音は吐ける時吐いた方が楽だろうと思うから、少なくとも私の前では強がりをやめて欲しい。

ゝ･参→←春、慰めと哀願･壱

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す